ゲリラ配信で現状報告(前編)

「お、この飲食店に配信スペースがあるな。 少しだけ現状報告の配信したらどうだ?」


「そうですね。 ドローンも持って来てるしやってみます」


 インターチェンジ内の飲食店で食事を終えた所で、叔父が配信スペースを見つけたようだ。

 ここは最大2時間配信できる個室となっており、別料金を払う必要があるが、防音魔法が付与された壁でかこまれているので、外へ声が漏れないのだ。


 俺の配信を見に来てくれている人たちへの現状報告の為に、一度配信をしようと思う。

 叔父が別料金を払ってくれたので、俺は国から支給されているドローンを持って配信スペースの個室に入る。


(ゲリラ配信になってしまうが、仕方がないな)


 今回は告知のないゲリラ配信で、内容は雑談だ。

 といっても理由がややネガティブな面もあるので、受け入れてくれるかが問題だが。

 そんな事を考えながら、俺はドローンを起動し、マイクをチェックした。


「えー、突然のゲリラ配信失礼します。 ゼロチャンネルこと岡崎おかざき 零時れいじです」


 まずは、挨拶を行う。

 いきなりのゲリラ配信だし、流石に視聴者は来ないだろうと思ってたが……。


《あ、ゼロだ!》

《まさかのゲリラ配信キタ━( ・∀・)━!!》

《でも、場所が自宅じゃないような?》


 いきなり数十人の視聴者が来たようで、俺の配信場所に違和感を感じる人もいるようだ。


「今回は、俺の現状報告と今後の予定について話をします」


 そこでコメントが一気にざわつく。

 何があったのかと、勘繰っているのだろう。


「まず、俺はこれからは実家から離れて宮津で一人暮らしをしつつ攻略配信やお絵かき配信をやっていこうと思っています」


 そのため、先に予定を告げる事にした。

 Vtuberでもそうだが、こういう報告は後ろ向きの報告じゃないのかと勘繰る視聴者が多いみたいだ。

 なので、先に予定を告げる事で、少しだけ安心させようと思ったのだ。


《新天地でか!?》

《おおっ、そこで活動の場を移すのか》

《一人だと大変だと思いますが、応援してますよ》


 ああ、コメントがあったけぇなぁ。

 とはいえ、理由も話さないといけないので気が重い。

 それでも逃げる事はしないのが、俺なのだ。


「今回の新天地への活動場所の変更は、両親にも相談して決めた結果です。 両親も応援してくれてますので」


《両親ええ人や》

《うちの両親とえらい違いや》

《俺も親ブロックされて行きたい会社に行けなかったしなぁ》


 両親に関する反応も上々だ。

 というか、一部の視聴者、大丈夫なのか?

 親ブロックとか不穏な単語を聞いたんだが?


「理由と言うのは、あそこでは兄と妹がアレなので、正直劣等感があってやり辛いんですよ」


 そして、活動拠点を移す本当の理由を打ち明ける。

 ネガティブが入ってるので、流石にと思ったのだが……。


《ああ、あの化け物の三人か》

《ゼロの身内だったんか……。 そりゃあ肩身狭くなるわ》

《あれはなぁ。 他のライバーさんは、配信を辞めるっていう位に心が折れる人も出たみたいだし》

《¥25000 【アリスちゃんねる】 気にしてはいけないのです。 自分のペースが大事なのです》


「暖かいコメント、ありがとう。 やはり、みんなはアレに思う所があるんだな……って、あれ?」


 続々と流れてくる理解してくれるあたたかいコメント。

 みんなは、あの兄たちや妹にヤバさを感じてるんだなぁ。

 そう思った所に、赤いお布施の入ったコメントを見返した。

 そのコメントの主は【アリスちゃんねる】。

 ちょっと待って、このチャンネル、俺は知ってるぞ。


「まさか……!?」


《【アリスちゃんねる】 お察しの通りなのです。 チーム飛鳥の一人のアリスなのです》


 そこで当人が爆弾コメントをブッ込んできた。


《アリスちゃんキタ━( ・∀・)━!!?》

《しかも赤いお布施で!?》

《さすが神童のアリスちゃん! すげぇよ》


 まさかのアリスちゃんがこの配信を見ていた事で、コメント欄も盛り上がる。

 俺も信じられない感じだ。

 というか、バズるつもりなんてサラサラなかったのだが、これで同時接続者が一気に増えてしまった。


(どうすんだこれ……?)


 アリスちゃんの登場に困惑する俺。

 ただ、これで終わらない事を今の俺が知る由もなかった。


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