それは、いつか恋に至るかもしれない青春のフォトグラフ
高橋めたる
中学生編
一年生
prologue. ≪4月≫
クラスに見慣れない男の子がいる。
彼の存在に気が付いたのは、中学の入学式が終わってすぐのことだった。
担任が戻らないのをいいことに、他のクラスメイトたちが顔見知り同士集まってざわつく教室の中で、その男の子だけが誰とも話すことなく、ひとりで自分の机の脇に立ったまま、手持ち無沙汰にしていた。
友達、いないのかな。
それが私の最初の感想だったように思う。
地元の公立中学は地域の小学校からそのまま進学する生徒がほとんどで、クラスによってはクラスメイト全員が知り合いだったなんてこともザラにある。
例に漏れずこのクラスも新入生同士、既にいくつかのグループが出来上がっている状態。黒板に張り出された席順表を確認してお行儀よく着席しようとする人は、彼の他に誰もいなかった。
私自身、小学校からの友達と同じクラスになれたことを喜び合いながら他愛もない話に花を咲かせていたけど、男の子は他に知り合いもいないのか、窓際の席で頬杖をつきながら桜が舞う校庭を眺めていた。
誰ひとり彼のことを知らず、話し掛ける人もいない。
他のクラスに知り合いがいるのだとしても、顔も見たことないなんてことはない。
異分子。はたまた浮いた存在。
クラスメイトの目には彼がそういう風に映ったことだろう。
私たちぐらいの年齢にとって、そんな印象を持たれることはほとんど死刑宣告に近い。
仲間外れや恰好のいじめの対象になるかも知れないからだ。
そこまでいかないにしても、友達がひとりも出来ない中学時代を送りたい人なんてそうそういるとは思えない。
だからみんなこうして、お互いに知り合いを見つけては自分から進んでグループの輪に加わろうとする。
自分はぼっちではないとアピールしているのだ。
私が彼の立場だとしたら、この教室はとても居心地の悪い場所に映っただろう。
アウェー感って言うんだっけ。
そういう空気を感じてしまい、これからの学校生活に軽く絶望していたかも知れない。
事実クラス中がその存在に気付いていながらも遠巻きに様子を伺うだけで、誰一人自分から声を掛けようとする人なんていなかったのだから。
でも何故だろう。
春の新しい風にさらさら揺れる前髪に隠れて、ここからではうまく表情を読み取ることが出来なかったけど、ひとり佇んで桜を眺める彼の姿からは、物憂げな印象よりもむしろ、この状況を楽しんでいるような、そんな高揚感にも似た雰囲気が感じられた。
私はそれがとても印象的だった。
やがて教室に担任の先生がやってくると、ばらばらに集まっていたクラスメイトたちが席順表に従って着席していく。
友達と別れて自分の席を確認すると、偶然にも彼の隣らしかった。
着席した私に気付いて、彼がちらりとこちらを振り返る。
その顔は、遠くからでは前髪に隠れてわかりにくかったけど、大きな目が特徴的な、どちらかと言えば整った顔立ちをしていた。
「よろしく」
短くてちょっとぶっきらぼうな言い方。
けれど不思議と嫌な気はしない。
それは予感めいたものだったのだろうか。
キッカケってこういう些細なことから始まるのかもしれないと、少しわくわくした気持ちを覚えつつ、知り合いのいないひとりぼっちの男の子が、早くクラスに馴染めますようにと願いを込めて。
彼のその言葉に私は笑顔でこう返すことにした。
「私、
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