第11話 ヘビ族ダリアンとスパイ

僕は群衆の期待に応え、城へ戻った。不在中の責務は、アオがすべてこなしていた。久しぶりの城だ。僕は自室の大きな椅子に座った。時空を超えたとはいえ、さっきまで人間界で普通の中学1年をやっていて、ここでは王。記憶がなかったとはいえギャップが大き過ぎる。僕は椅子に深く座り天上を見た。天井の模様の一点に焦点を合わせる。深く考えたい時のこの癖は、この水の異世界でも人間界でも同じだ。よくテスト中に天上をみていたなあ。僕は天井の一点に焦点を合わせながら脳内で考え続けた。結局、異世界でも人間界でも本質的には変わらない。仮にこの水の異世界での僕の姿が,多少大人になっていたとしても。たぶんいや、”確信を持って変わらない“これだけは言い切れる。異世界から見た人間界は異世界だ。だが“僕は、僕だった。”その環境、人間界の中学1年を楽しめた。ヘビ族ダリアン、との戦いでお前のせいで時空へ飛ばされたが悪くなかった“

よし、そろそろ本気出しますか。”

僕はアオを呼んだ。「最新の現状把握が必要だ。報告を。」王、直属の戦闘員、すなわちこの水の異世界セント・バルチアの知恵とパワーの戦略部隊の会議である。バルチアの頭脳である。アオはもちろん、ミヤ、レリアも所属している。僕は一同と顔を合わせた。僕はヘビ族の侵略地点を確認した。「それぞれの要所に戦闘部隊を配置する。東西南北、ミヤ、レリア、

アオ、北王都は僕が、守ることに配置決定をする。部隊を整え、急ぎ向かうように。」僕は立ち上がり命令した。「はい。」部隊長はそれぞれ会議室を出た。

「アオ。」僕はアオを呼び止めた。「アオ、僕が不在中の事務処理、采配助かった。」アオは「いつもの事だ。問題ない。」「今の現状と大まかなことは、わかった。僕が戦い中にダリアンに不覚にもかまれたせいで人間界へ異世界転生してしまったようだ。すまなかった。それに僕は記憶を無くしていた。アオ、よく僕を探しくれた礼を言う。よく見つけることができたな。」アオが少し顔をしかめ「実は王を、」「待てアオ、レイでいい。いつも通り、堅苦しいのは好きではない。その方が楽だ。」「じゃ、そう呼ぶ。レイ、今回、レイを見つけられたのは偶然ではない。」「どういうことだ?」「以前からヘビ族が我々の聖なる泉を狙っていたのは知っていると思うが、どうやらスパイを潜入させていたようだ。そして2人の名前があがっていた。そのひとりが、レイには悪いがレリア、そしてもう1人がコイだ。」「レリアとコイがスパイ?」「そうだ、レリアの話は長くなる、後だ。先にコイだ。人間界で出会った桐ヶ丘中等部のあのコイだ。」僕は身を乗り出し「コイ?」「そうだ。僕ら戦闘部隊はセント・バルチア聖なる泉を、王レンを、守るため怪しいと思われる2人を追跡していた。以前よりヘビ族と連絡を取っていたコイが突然消えた。ちょうど、レイが異世界の人間界に消えたのと同時期だ。僕らはコイを追跡した。時空を飛び越えての捜索のため少し時間がかかってしまった。コイのいた時空にレンがいた。そこからはレンとコイ、タイムマシンで捜索した山田先生との記憶だ。」「アオ、と言うことは、コイはスパイで僕をずっと監視していたということなのか。」「そうだ、その通りだ。」「あの時の山田先生との思い出は嘘ではないような気がしたが。」「たぶん、命を鯉の姿で救われたのは、本当だったと思う。」「コイは敵なのか?」「たぶん。」僕は群衆の中にいたコイの姿が薄かったのを思い出した。「アオ、さっきの群衆の中に影の薄いコイがいたようだ。」

「影が薄い?もしかしてコイの命が短いかもしれない。」

「ヘビ族ダリアンとの関係も聞かなくてはいけない。

アオ、命令だ至急、コイを探すように。」

「はい。」アオは部下の戦士部隊に捜索を命じた。






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