第7話 時越えて山田先生とコイ
僕らは理科室を出て急ぎ、体育館へ向かった。アオが「時間を動かすよ。」ドンっという音とともに時間が動き出した。アオは「あとでコイを連れてくるよ。じゃ。」っといって消えた。僕らは、何事もなかったように反省顔で体育館の後ろに立っていた。言葉を発したかったが、それぞれの頭の中で何かを整理していた。校長先生の話も終わり、終業式も終わった。学年ごとに生徒は教室に戻った。最後に残った僕らのところに山田先生が来た。「反省したか?」僕らは「はい。」そろって言った。そして僕は「先生、昔、池の鯉を助けたことはありますか?」直球で聞いた。「池の鯉?」少し間があり、「池の鯉か。ずいぶん昔だ、そうだ、ここの中学の時に1度あるな。鯉のことはよく覚えていないが、かなりひどい雨に降られた。風邪で次の日の弓道の大会に出れなかったからな。」コヤマが「先生、弓道部だったの?」「そうだ。なんでコヤマが、知ってるんだ。
まあいい。これでも2年までは全国大会に出てたんだぞ。」僕は「先生、なんで弓道やめたんですか?」「3年の大会に出れなくて。たぶん、ものすごく悔しかったんだろうな。そんな時、柔道部が人数、足りなくて、先生は、当時今と違って体重は無かったが、背が一番高かったから声がかかったんだ。柔道部の主将は、幼なじみで仲が良かったしな。それで、なぜか、勝ち進んでしまって。面白くなってそのまま高校、大学と柔道を続けた。」僕は素直にすごいと思った。「先生、すごいんですね。」「そうだな。ついていたんだろう。」そう言って山田先生は、僕らの頭を大きな手でなでた。ムラタが「先生、昔は、イケメンだったんですね。」山田先生は「はあ?確かにモテては、いたな。はははー。」と笑い飛ばした。「しかし、ムラタ、どうしてお前が知っているんだ。」僕も、コヤマも「先生、僕も知っています。」「先生、色白でほんとマンガの王子様のようだったんですよね。」イカツイ山田先生が照れている。体育館入口に青カエルのアオとコイがいた。アオがピョンと出てきてスーッと人間の姿に変わった。2人は、僕らの方へ来た。人間の姿のアオが、「突然すいません。僕の友人がどうしても助けていただいた山田先生にお礼が、言いたいと来てしまいました。」山田先生が珍しく緊張している。「僕が、あなたの友人をですか?」コイが「はい。」と小さな声で答えた。その瞬間、光が放射線に輝き出した。山田先生の姿が、15年前の中学生に戻る。僕らは、空間移動で体育館の2Fに飛んだ。コイが「ヤマダカイ君。私は、あなたに助けてもらった池の鯉です。15年の時が過ぎてしまいました。“ありがとう”が言いたくてここに来ました。」山田先生は色白の細身のあの頃のイケメンの姿だった。コイは「ありがとう。」そう言って右手を出して握手した。光の中でコイの顔が嬉しいそうに微笑んでいた。再び光が放射線した。コイは消えていた。アオは青カエルに戻り僕のポケットの入っていた。山田先生も、もとのイカツイ山田先生に戻っていた。コヤマもムラタも何事もなかったように立たされた、ままだった。コヤマが「先生、もう教室もどってもいいですか。」イカツイ山田先生は少しボーっとして「あーあ、そうだな、ちゃんと反省しろよ。教室に、戻ってヨシ。」コヤマとムラタは体育館入口までさっさと歩いて行った。後ろから僕に山田先生は「レン、まぼろしって信じるか?さっき一瞬15年前の自分に戻ったんだが。」僕は「幻はよくわかりませんがタイムトラベルはありますよ。僕は信じますよ。山田先生。」ポケットの中からアオが「レン、山田先生の記憶は残した。コヤマとムラタには、わるいが記憶から青カエル、アオ僕の記憶は消すことにする。」「アオがそうしたければいいよ。」僕は知っていた。山田先生の幻は、アオの力だ。それに、ほんのわずかな時間であれば人間は、だれしもタイムトラベルができる。”頭の中に浮かんだ映像。浮かんだ瞬間に、その場所、そこに飛ぶ事ができる。タイムトラベルだ。”アオが「レン、明日は僕に付き合ってくれ、青カエルの恩返しと言い切りたいところだが、少しレンの力を貸して欲しい。」「おばあちゃん家?アオ、いいよ。」「じゃ、明日、迎えに行くよ。」そう言ってアオはジャンプして体育館入口から出ていった。コヤマが「カエルが跳んだぞ。青カエルだ。」ムラタが「体育館の中からか?見間違いだろう?」「そうだな。」二人の記憶からアオの記憶は消去されていた。”アオ、君はいったい何者なんだ。そして僕は?明日が楽しみだ。」
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