第2話 青カエルと登校

僕はポケットにアオを入れたまま、電車を乗り換えた。人混みの中、僕らは頭の中で話した。いわゆる超能力だ。『アオ、僕ら超能力者なのか?』『まあな。』『アオ、単純な質問だが、良く僕のこと覚えていたな。』『当たり前だろう、命の恩人だ。忘れるわけないだろう。』『へーえ、そんなものか。僕は、忘れていたよ。でも懐かしいなー、しばらく、おばあちゃん家には行っていないな。』『レン、明日から夏休みだろう。僕と帰らないか?』『悪くないな。中1の夏休みは、意外と暇そうだからな。』ガチャン。電車のドアが開く。駅に到着。改札は学生でいっぱいだった。この駅には学校が多くて同時間は、かなり込み合う。今日は?僕はいつも会う黒髪の女子を目で追った。桐ヶ丘中等部女子の制服だ。”きれいだー。”すかさずアオが『レン、好きなのか?』 『あー、とてもきれいで黒髪、色白、正統派って感じでいいよなー』『へえー、レンの好みかあ。』アオは、小さいため息をついて続けた。『レン、残念だが彼女は、池の鯉だよ。きっと彼女も僕と同じで誰かを探している。それに長いこと人間界にいるようだ。まるで本物の人間のようだ。』『彼女が池の鯉だって?アオ、嘘だろ。中1男子の夢を奪わないでくれよー。』僕らが会話していると頭の中に彼女の声が入ってきた。『君たち私の正体がわかるの?』僕は、ときめきを横に置き冷静に『はい。』と一言だけ答えた。彼女は振り向き立ち止まり僕らの方へ来た。頭では池の鯉と分かっているけど、目の前にこうして立たれるとドキドキが止まらない。アオが『レン、何を緊張しているんだ。彼女は池の鯉だ。普通に話せば?』『そうだな。』僕は改めて彼女を見た。わあーやっぱりきれいな人間の女子にしか見えない。だめだ。緊張する。アオが、ポケットから出てきて「ポコッ」と僕の頭をたたいた。僕はハッとして冷静になった。よく見ると彼女は何か困っているようだった。「どうしたの?僕で良かったら手伝いよ。」声をだした。「ありがとう。やっと話せる人と出会えた。」「それは良かった。」僕は携帯の時間を見た。7:41微妙な時間だ。立ち止まったら遅刻する。僕はアオに「頼む。時間を止めてくれ。」アオは「なんで、僕が時間を操作できることをレン知ってるの?」「なんとなく、感だよ。」「そう。」あっさりアオは、その力を認めて時間を止めた。「レン、これでいいよ。ゆっくり話、きいてあげれるよ。」「アオ、ありがとう。」その女子も頭をぺコと下げた。「私の名前は,コイ。青カエルさんが言うように池の鯉です。15年ほど前に池でいたずらな子供たちにつられて土の上に上がったところを背の高い大きな手のやさしい瞳の少年に助けられました。お礼が言いたくて、あれから毎日この駅の改札の人込みにまぎれて”あの少年を探していますが見つかりません。制服は今、あなたが着ている、その制服だったことと長い弓矢を持っていたことだけです。」「僕と同じ中学か。15年前。弓矢かあ。」僕はできるだけ探すことを約束してコイとわかれ学校へ向かった。『アオ、見つかるかな?』『うーん、わからない。まあ、学校へ行けば卒業生のアルバムや何か手がかりがありかもしれない。』『そうだな。』アオが、『じゃあ、時間、動かすよ。』時間が動き出した。僕らは、ゆるやかな坂を上り校門をくぐった。



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