第7話 隠したナイフ


僕の手が乳房に強く触れる。


君は可愛い悲鳴を出してそのまま眠りこんでしまった。


僕は鏡に映った君の寝顔を確認したのち、僕は暗い天井を見た。


小夜子は極度の人間嫌いで、家に閉じこもりがちだから、僕にはこのシミがたくさんついた天井を否応なしに見える。


自分で言うのもなんだが、外交的な方だと思うから、館から出て外の空気を吸いたいのだが、小夜子の気分がすぐれないときは我慢するしかない。


あの男を僕はどうしたら殺そうか考えた。



僕は小夜子が寝ている間、この古い屋敷にある切れ味のいいナイフを探そうとした。


お祖父さんが趣味で西洋ナイフを収集していた、と小夜子から聞いたことがある。


確かお祖父さんの書斎は南側の部屋だ。


白い彫刻の女が飾ってある長い廊下を抜け、僕は鍵がかかってある書斎に向かった。


鍵はあの白い彫刻の下にある。女の彫刻像の隙間に入っている、と小夜子から聞いたのだ。



彫刻の下には華奢な鍵束があった。


それを慎重に持ち出し、皆にばれぬよう細心の注意を払って僕は鍵を開けた。


中は暗い。どんよりと湿気が充満して黴臭い。


暖炉の上には鹿の剥製が飾ってあり、目が合いそうで一瞬ひるむ。


壁にはたくさんの古い本が並べられ、全体的に部屋は黒い。


何をしている。もうすぐ小夜子が起きてしまうじゃないか。



僕はかなり焦ると鹿の剥製を睨んで適当にあさり始めた。


軽く五分ほど時間が経つと、このままでは家の者にばれてしまうと我に返り、お祖父さんが使っていた机の引出しをあさり、暗号のようなものを見つけた。


それには桜島の上にある、と書いてあった。


僕はしばらく考えこんであの鹿の剥製の下にお祖父さんのナイフのコレクションがあると確信し、(桜島があるのは鹿児島で、その上は鹿だからだ)椅子を使って暖炉の前に乗り、鹿の剥製の後ろを確認する。


壁を見たら書棚の、南側から四番目にあると書いてあった紙が貼ってあり、(お祖父さんも随分道楽なことをするものだ)僕はお目当ての場所に行き、西洋ナイフを手に取った。


鞘に包まれた西洋ナイフはこれ以上の凶器にふさわしいものはなかった。


「真一さん、あの方を殺してはダメ。私の治療のためにはあの方は必要なの」


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