第2話 交代人格、真澄鏡


君さえ殺めてしまえば、僕はこの残酷な世界で生きる術を身につけられる。


君の肉体の器である女という身体って案外不便だらけかと思ったけれど、本質的に言えば業を背負った人間であることには一切変わりないから、そんな大したことはないね。


女だろうが男だろうが人が業を背負い、苦しみもがくのに例外はない。




 君が僕であろうと、僕が君であろうと本質は一切変わらないのを君は忘れてしまったのかい。


 


 あの頃の君は僕のことを好きだ、と言ってくれたね。


 それから君は僕を信頼しなくなった。


 必要としなくなった。




 これだけは言えるよ。


 よく聞いてごらん。何度も言わないから。


 僕を何度否定しても、所詮は君の傷心なのだから、僕が君の心の傷を背負って生きてきたおかげで君は何とか生活できたという紛れもない真実がここにある。


 いつでも琴線がぷっつりと切れてしまったら、君はすぐにでも狂って生きられなくなるはずだった。


 君が僕を作ったから君は君として、普通の人間として振る舞えたんだよ。




 他者を欺き、道化を演じ、媚を売って普通という鏡の表面に映れた。


 君と僕は同じ心なのだから、傷ついた脆い心が鏡を割るよ。


 何度も何度も普通という鏡を割って粉々に散れたら、今まで味わってきた苦しみから逃れられるだろうか……。 


 君もまた救われるだろう。


 僕を殺しさえしなければ。



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