第22話ダンプの残土処分
菊水町からゴオーッと、いう地鳴りにも聴こえる音が坂道を上がって来て甲の背後を通過していった・・・。
懐かしい騒音だったがふと、我に返った甲は小学生の時、同じような体験をした事を思い出していた。
薄緑の背の高い金網フェンスは神戸市が設えたもので、小学校の校庭のフェンスと同じものだった。
頻繁に甲の背後を通過するダンプカーは貯水池の北側の先に造成されている石井ダムの残土を処分していたのだろう。
大曽根甲の実家は熊野町に在った。
土地は借地だが、家屋は購入済みの屋内を二軒に仕切る構造壁が東西に家屋一軒分走る、所謂二軒長屋だったが、これについては賃料が発生しなかった。
建物は全額現金購入していたため所有権は大曽根家にあったからだ。
幼い頃の甲の遊び場は、近所の幼馴染と駆けっこ、鬼ごっこ、かくれんぼ、蝋石で道路に絵を描きケンケンパーなどで遊んだ。
夏には昆虫採集に山へ出掛ける事もあったが、専ら独りで行動していた。
収穫した昆虫を幼馴染と分ける際にケンカが勃発するからだった。
甲の良く行く山は清水町の奥にある清水山だったが、町民は(おだいし)と呼んでいて、その昔、お大師さんが山を開いたという都市伝説がまかり通っていた。
誰もが信じていた。
甲の好きな昆虫はカブトムシ、クワガタ等の甲虫でこれらの採集に甲は心血を注いでいた。
6歳や7歳で山へ入り危険な体験や不思議な体験を数多くして来たがその体験を自分ひとりの事件として、胸中に納めるタイプだったので、(男は黙ってサッポロビール)というフレーズが良く似合っていた。
10歳になったあるとき、おだいしの頂上へ行く挑戦をしてみたいと思った。
思ったら即行動してみないと気が済まない質だったから即実行した。
頂上への山
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