第23話 おだいし

大曽根甲の実家は熊野町に在った。

土地は借地だが、家屋は購入済みの屋内を二軒に仕切る構造壁が東西に家屋一軒分走る、所謂二軒長屋だったが、これについては賃料が発生しなかった。

 建物は全額現金購入していたため所有権は大曽根家にあったからだ。

幼い頃の甲の遊び場は、近所の幼馴染と駆けっこ、鬼ごっこ、かくれんぼ、蝋石で道路に絵を描きケンケンパーなどで遊んだ。

 夏には昆虫採集に山へ出掛ける事もあったが、専ら独りで行動していた。

収穫した昆虫を幼馴染と分ける際にケンカが勃発するからだった。 

 甲の良く行く山は清水町の奥にある清水山だったが、町民は(おだいし)と呼んでいて、その昔、お大師さんが山を開いたという都市伝説がまかり通っていた。

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