第17話

「甲、帰ろうか?」と父が背中を叩いて来るのでは無いかと、後ろを向き向き、水面を観ていたが、赤とんぼが風に乗ってクルと甲の頭上を飛び回る頃・・・

甲が泣きじゃくりながら亀石公園の西側を行くと左手に坂があり下って右手前に烏原町と夢野町の境の急な坂道を上がる序に権現さん所謂、熊野神社へ横切り帰った事を今でも覚えている。

 自宅に辿り着くまで父が待っているのではないか?


と思い、父と遊びに行った所へ回って見たが、誰一人、甲の顔見知りの大人には出会わなかった。


 もしかして父が貯水池から上がって来て、亀石公園の亀の甲羅に跨って休んでいるかも知れない! と思ったら居ても立っても居れなくて、ダッシュで亀石公園に引き返した! 23㎝の運動靴の紐が切れて脱げたが、甲は靴下のまま走り続けた! 


亀石公園までの最後の坂道を駆け上がり右に曲がってお父ちゃん! と、叫んだ!


しかし、待っていたのは石を積んで亀の形をした亀石だった・・・。  

 

 もう大粒の涙が溢れて着ていた象さんの絵の描いた白いポロシャツは涙と汗で汚れていた。

左わき腹に泥が付いていたのは、坂道を恐ろしく早い足で駆け上がろうとして落石躓いたからだ! 

左膝を擦り剥いて血が滲んでいた。


右横を見たが、一人だったからゆっくりと亀石に近い・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る