第4話 満員電車

脳内( )

口語「 」


SE//ガタンゴトンという電車の音


「今日の模試対策難しかったね。今回は私もけっこう頑張ってるし、絶対君には負けないから。もし私が勝ったら何してもらおうかな?」


SE//停車駅のアナウンス


「あれ? すごい人! いつもはこの駅からこんなに人乗ってこないのに……わわわっ」


「うぬぅ……おしつぶされるぅ……助けてぇ……」//だんだんと声が小さくなる。


(顔が潰れて声が出しにくいよぉ……。まったく、こんなことになるなんてね。何かのイベントかな? まさかこの時間に満員電車になっちゃうなんて。せっかく帰宅ラッシュの時間を避けるためにカフェでのんびりしてたのにね……)


「うぬ……」//」必死に声を出そうとしている。


(あ~~~やっぱり無理だ。脳内で会話する方が楽だね。君ぃ、意外と余裕そうだね。私の周り、みんな身長おっきくて力が強いからから、すごくつらい……)


(……えっと、思い切り胸に寄りかかっちゃってもいいかな……。後の女の子の押す力が強くて負けそうで……)


SE//胸に顔を押し付ける


(どーん! へへへ、楽ちんだ。意外と胸板厚いんだね。もしかして筋トレとかして鍛えてる? すっごく、かたーい。あはは! カチカチだね。ツンツンしてやるっ。えい!えい!)


(あ~~贅沢を言えば、やっぱり柔らかいほうが良かったなあ。枕みたいに柔らかくてふわふわだったら、ゆっくり寝られたのに。男の子の気持ちがちょっと分かったよ。な~んてね)


SE//弱いブレーキ音


(おっとっと。あぶないあぶない。ちょっとバランス崩して転んじゃうところだった)//違和感に気付く。


(……って……んっ……ごめん……ちょっと……何これ? こわい……)//少し怯えた感じで。


(あ、そうか……これ、君のカバンかっ。あっ……がっ……んっ……動かさないで! 変なとこに当たってる……どかして……ちょっとそっちじゃなくて……! グリグリしないでっ! あっ……!そう……ゆっくり……ふぅ……)


(まったく……こっち見ろ……私の顔を見ろ……いいから見ろ。断ることは許さないから見ろ)


「バカ……」//恥ずかしそうに小声で。


(はぁ……まったく……とんだアクシデントだったな。今日習ったこと忘れちゃったかも。この責任は重大だからね)


(……またバランス崩すと危ないから、き……君の体をだね、抱きまくらたいに使ってもいいかな? べ、別に変な意味はないよ。やっぱり掴むものがあればバランスが取りやすいからさ。転ばないためだよ!)


SE//腰に手を回してくる。服が擦れる音。顔を押し付ける音。


(落ち着く……)


(いい匂い……。ふふふ)


SE//呼吸音、心臓の音が少しずつ大きくなっていく。


(すごくドキドキしてるね。心臓の音がおっきい……)


(こうやってギュッとしてると、なんか君と初めて脳内で繋がった時のことを思い出すね……)


SE//ガタンゴトンという電車の音










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る