第42話 ダンジョンの中の安息
相間玲香。
四年前に俺が配信者としての生命を絶たれるきっかけになった原因。
もう年月は経つがいまだに、ニュースで大々的に報道されたその名前を覚えていた。
当時の俺ならば腑が煮えくり返ったあまり、殴りかかっていたかもしれないが、時も経ち、冷静になった今は一概にこの人が悪いとは思えなくなっていた。
当時は配信での初の死亡事故な上、過失致死では類を見ないほどの死者数ということもあり、悪様に報道することもあったし、廃業に追い込まれた個人配信者の怒りの声がSNS上で溢れていたことで、彼女を憎んでも当たり前のような雰囲気が形成されていたが、よくよく考えれば当時の配信者の環境にも問題があったのだ。
ダンジョン協会が口だけで忠告するだけで、具体的な罰則を設けなかったため、真面目に呪物を処理している配信者がバカを見ていたし、実際呪物を処理するのはデビューしたてのズブの素人がするものだとコケにする風潮があった。
俺は呪物が得体の知れないもので、配信には映したくないという個人的な感情からズブの素人だと誹られることに恥を忍ぶ思いはありつつも処理していたが、ほとんどの配信者は呪物のことなど気にせずに配信していた。
今から思えば、600人を呪死させた配信事故は誰の身にも起こることだったのだ。
相間さんはある意味不幸な被害者と言ってもいいだろう。
今まで逃げてきたことに関しては同情できないが、年長者として助言はするくらいはしてもいいかもしれない。
「今すぐここを出ましょう。全て包み隠さずに話せば、懸念通りよりは多少マシなはずです」
「適当なこと言わないでよ。外の奴らは人を自殺まで追い込んどいて何も思わなかったクズどもよ。理由を知ろうが、知るまいが関係ないわ。ただ人を嬲りたいだけだもの。もうわかったでしょ? 私に強要しないでよ。600人殺してただでさえ苦しいのに、人でなしどものおもちゃになれだなんて言わないでよ!」
言葉を選んで助言はしたつもりだったが、俺が思うよりも彼女の心は荒れていたようで、四方に魔力が散ると思うと壁や床、天井が蠢き始め、彼女は一瞬で姿を消した。
地面の中に身を隠したようだ。
地面に魔力が張り巡らされているため、魔力での判別は不可能。
すぐに取り押さえるのは難しい。
「消えて! 私を傷つけないで!」
拒絶の言葉が聞こえると、壁、天井、床がさまざまな凶器を形造り始めるのが見えた。
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