第41話 邂逅
ひどく髪の長い女にやっと手が届く距離に来ると、眼下から岩壁が迫り上がってきた。
土魔法だ。
まさか人に対して、魔法を打ち込んでくるとは思っていなかった。
迫り来る岩壁を殴って破壊すると、さらに遮るように4つの岩壁が競り上がってきた。
全て拳で粉砕し、障害を全て排除する。
後を追おうと思うと、視界から女の姿が消えていた。
代わりに壁に擬態するように、土魔法で壁が作られているのが見える。
魔力が見えるので、魔法で作った壁とダンジョン本来の壁の違いは一目瞭然だった。
殴って割ると勢い余って、怪我をさせてしまうかもしれないので、チョップをして壁に小さな穴を開けてから、両手を突っ込んで開き割る。
「わかるわけがないのに、どうしてわかるのよ!?」
土の壁を剥がしてみるとやはり中には女が隠れており、絶望した顔でこちらを見上げてくる。
「ある程度ダンジョンに潜っていれば、魔力が見えますから。それよりもどうして泣きながら走ってるんですか? ダンジョン協会から調査依頼を依頼されるくらいには不審がられてますよ」
「潜ってれば見えるって言ったて、今までの人は見えてなかったんだから、あなたが見えるなんてわかるわけないじゃない! そんなの知らないわよ!」
俺が尋ねると、ダムが決壊するような勢いでまたぞろ号泣し始めてしまった。
様子から止むに止まれぬ理由がありそうなのはわかったので、とりあえずこのS級ダンジョンから離れるようにすることをした方が良さそうだ。
「とりあえずここで泣かれるのは困るので、外に出ましょう。ここはS級ダンジョンなので人目に晒されることもないですから」
「出れない。出られるわけないでしょ。外に出たら警察に捕まって袋叩きになるんだから」
警察に捕まるってこの人、犯罪を犯してこのS級ダンジョンに逃げてきている口か。
尋常でない様子だというのはわかっていたがまさかここまでは。
追い詰められてる人を説得するのは無理だし、無理やり外に引き摺り出すしかないだろう。
「ここにいてもしょうがないでしょ。外に出ましょう」
「やめて……。出て行ったら確実に死ぬまで追い詰められる。600人も呪死させたんだから」
彼女に肩に置こうとした手が自然と止まった。
600人を呪死。
その言葉を聞いて、四年前に夢を諦めさせる発端となった人間のことを思い出した。
相間玲香。
捕まったという話は聞いていなかったが、こんなところにいたとは。
ーーー
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