第39話 啜り泣く声
できれば泣き声の正体がわかればいいのだが、正直ここに出るモンスターに人の泣き声に似た声音を出すモンスターがいないので、未だに半信半疑だ。
怪奇現象が起きてると言われても、この方そういうものに遭遇したことがないので、やはりにわかには信じれない。
協会からこちらに依頼を要請するくらいなのでガセということはないだろうが。
「全然聞こえないすね」
「初層で聞こえたってことだから、一層より下かもしれないね」
「なんか異様に早く2人とも一層を切り上げたがるよね。もしかして、ビビってるの?」
なんとなしに発言だったが、暇を持て余したアスカさんのイタズラ心を刺激したらしい。
煽られることに耐性がないのか、ディヤリさんが顔を赤くする。
「はあ!? はあ? ビビってねえし! どこら辺がビビってるか、言ってみろよ!」
「全身」
「ば、ば、ば!? て、適当言ってんじゃねえよ! ぜ、全然だろうよ! 俺がビビってねえことを証明してやるよ! オラアアアア!」
どこか思い当たる節があったのか、ディヤリさんは狼狽した様子を見せると、ダッシュで奥に走っていく。
昔見たホラー映画の死亡フラグそっくりの行動だ。
先ほど危なげなくモンスターを倒していたので、モンスターにやられることはないとは思うが、もしかしたらもあるし、追いかけるか。
それから間をおかずに追いつくと、急にディヤリさんの足が止まった。
「声が……」
彼は棒立ちになったまま呟く。
周りに耳を澄ましてみると、確かに啜り泣きの声が聞こえる。
「ホントだ」
アスカさんも聞こえたようで、同調する。
ディヤリさんだけでなく、アスカさんにも聞こえているところを見ると間違いないだろう。
目を凝らしていると足元まで髪の毛が届くような女が啜り泣きながら、目の前を横切って走っていくのが見えた。
「どこにもいねえのに聞こえる!」
「急に大きくなったと思ったら小さくなったね」
2人の様子から見るに、俺以外には見えていないようだ。
動体視力の違いか、霊感のようなものかはわからないが、音源がわかったのだから確保して詳しく調べた方がいいだろう。
「今、女が目の前を横切りました。俺は追いかけてくるから、2人はここで待ててください」
「ちょ、冗談は……。 消えた……」
「淳さんが本気で走ってたんだよ。もしかしてやばいモンスターが初層に来てたってことかな」
2人に言い置くと、強化をかけて女の後を追った。
ーーー
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