第37話 ダンジョン協会
シロクロつける--エクスプレイとの合同配信が決まったので、そのためのダンジョンの制定のためにダンジョン協会を訪れていた。
エクスプレイ側はこちらに好きなダンジョンの選ばせてくれると言うことだが、S級ダンジョン限定でとの要望があるので日本の中で言うとかなり場所は限られる。
前配信可能なS級ダンジョンが『破滅の扉』しかなかったこともあり、社長からはそこでいいんじゃないかと言われたが、ベテランでも途中からの攻略を開始すると調子が狂うことで事故を起きやすいことを考えるとできればそれは避けたいので、今現在俺は一縷の望みをかけてダンジョン協会に足を運んでいる。
無論先方のことが心配というだけでなく、アスカさんが単独でS級ダンジョンに挑むのは初めてなので、できるだけ難易度の低い初層から始めたいということがある。
「あら、伊藤さん。またS級ダンジョン攻略報告に来たの?」
「いや、配信に使えそうなS級ダンジョンがないかなと思いまして」
受付に向かおうとすると、日本支部の協会長である大塚さんに声をかけられたので素直に答える。
「やあねえ、また配信場所を増やそうっていうの? 伊藤さんっていけずなんだから」
「いえ、そういうわけじゃなくて、今度他のところとコラボをするので、途中からS級ダンジョンを攻略するのは安全上ちょっとよろしくないので、他のところがないかなと思って」
「確かに最近はそういう事故多いからね、気持ちはわかるんだけど。前回言ったけど『破滅の扉』以外はないのよね」
「やっぱりそうですか……」
「伊藤さん、切ない声を出さないで……。しょうがないわね、あなたが調査に協力してくれるなら『怨霊の箱』の初層を配信可能にしてもいいわよ」
俺が諦めて、踵を返そうかとすると、大塚さんは皺の刻まれたおでこに手を添えると大きく息を吐いて、条件付きだがS級ダンジョンを紹介してくれると申し出てくれた。
気安い態度とは裏腹にそういうことの線引きはしっかりしている人なので、異例中の異例とも言える光景だ
「本当ですか!?」
「本当よ。あなたには快挙を起こしてもらってウチも恩恵に預かっているから、これだけの融通しないとお天道様に見捨てられちゃいそうだしね。伊藤さん、一つ聞いてもいいかしら?」
「ええ、なんでもどうぞ」
「あなた怖いのって大丈夫?」
「怖いのですか。あんまりホラー系列の映画とか、オバケ屋敷とか見ないからなんとも」
「そうなの。まあでも見た目大丈夫そうだから。大丈夫かしら。実はあそこ、初層で女の子の啜り泣く声が聞こえるのよね。今回してもらいたいのはそれの調査なのよ」
調査というので、ダンジョン特有の何かと思ったら、心霊関係のことだとは思っても見なかった。
確かに女の子の泣き声が聞こえるというのはシチュエーション的に不気味で怖いが、要は原因が何かないかダンジョンの初層を隈なく見てくれということなので、そこまで大変なものではないし、これで無理が通るというのなら断るという選択肢はないだろう。
調査を受けることにした。
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