第32話 謝辞
懸念はあったが、なんとかオールスター配信を終わらせられた。
放送事故が起きなかったのは、人数が多かったのもあるが剣道さんが他の配信者と即座に連携をとり、モンスターが攻撃する隙を与えなかったことが大きい。
初層とて俺のように攻撃を喰らっても無傷とはいかない分、頭が上がらない思いだ。
「剣道さん、サポートに回って頂いてすいません」
「流石にあれだけ配信者を応援する声を間近で聞いてはな。しかも私に隣に居たのはアスカだ。私も彼女のリスナーだけあって彼女が活躍するところが見たいと思ってもそうしただけだよ。それにガッツのある奴が見れたし、楽しかった」
「そう言って貰えると嬉しいんですが、それでも大変な局面はあったと思いますし、後ほど何らかの形で返させて頂かせてもらえたら」
「淳さんはどうだったの?」
この配信で負担の大きい立ち回りをしてもらった剣道さんに謝辞を述べていると、アスカさんがそう尋ねてきた。
話の流れと配信の最中気にかけていたことから今日の望月さんの配信のことだろう。
「そうだな。血だらけになちゃってたし、一概に褒められたものではなかったけれど。今回の配信でバズってアスカと同じくらいまで同接数を伸ばしてたからな。結果としてはいいことだと思うよ」
「厳しいね。淳さんには面白いものじゃなかったんだ」
別に不満があったという訳ではないが、今の主流はできるだけ血を流さず、ピクニックに行くような軽い感じで配信するのが主流なので、言うなれば、望月さんの配信スタイルは傍流で成功しても他の配信者とスタイルが違うのでノウハウを共有できないのだ。
正直事務所の人間としてもできれば主流のスタイルでバズってくれればと思わずにはいられないし、俺が配信者失敗した配信スタイルと同じということでどうしてもどこかで挫傷するような気がしてならないのだ。
「俺と言うより、事務所の人間として面白くないってところかな」
「ふーん」
回答に納得いってないのか、毛先をいじると興味を失ったようにそっぽをむいた。
「すまないがこれから大事な要件があるので、失礼させてもらう。今回のフィードバックはあると思うが、後日に頼む」
剣道さんはそう言い残すと背を向けて去っていた。
大事な要件とは今日の夜中からSNSでアスカさんがリスナーに応えるコーナをやるのでそのことだろう。
足早に立ち去ったのはアスカが近くにいることで理性が限界だったと言うこともあると思うが。
「淳さん、この後ちょっといい? 打ち合わせをしたいんだけど」
俺も解散して事務所に戻ろうかと思うと、アスカさんからそう申し出があった。
このタイミングでの打ち合わせだ。
気にかけていた人物とは言え、今までの積み重ねが一事のことで抜かされそうになって懸念を抱いているのかもしれない。
答えるべきだろう。
事務所から喫茶店に進路を取り直し、彼女の申し出通り、打ち合わせをすることにした。
ーーー
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