第31話 壁を越えた向こうで
サーベルを振るい、波を起こす。
魔力による体の変容でまた喀血するが、エボリューションは気にせずに続ける。
波を渦に変え、翻弄されて体勢を崩したメガゴブリンの首を切り上げる。
大量の血が上がるとともにメガゴブリンは絶命する。
・うおおおお! 単独でS級ダンジョンのモンスター倒した!
・今日の攻略では単独撃破は初じゃね!
・人は気合い、元気、岩城でここまでやれるのか
・画面がスプラッタ映画一歩手前で草
・ゴー☆ジャスのコスプレしてた頃から成長しすぎだろw
・もう顔面だけの男やないなら顔面ワイによこせ
・顔変えても君は性格でout定期
最前線のモンスターの取りこぼしを超えて、エボリューションは追いついた。
降り注ぐ魔法の渦中に飛び込み、サーベルを振りかぶる。
エンチャントでは地味だと察したエボリューションは水魔法を発動させてサーベルにウォーターカッターのように高速振動する刃を追加し、特大剣レベルに拡張するとそのまま振り抜く。
魔力の変容により幾らかは拡張された魔力が空になり、メガオークが一刀の元に両断されたのをエボリューションが確認すると、再びコメント欄がざわめく。
・一刀両断しててワロタ
・マンガの強キャラで草
・ソードマスターエボリューション
・同接がすごい勢いで増え出して草
・一億、一億五千どんどん上がっていきやがる
・アスカスおるけどワンチャン今日一行けんじゃね
壁を抜いた!
エボリューションは同接の急速な伸びでそう確信する。
最後の最後でやっと同じ領域に立った。
差が大きく開いてないことを信じて、サーベルを振るう。
モンスターを幾らか屠ると突き当たりに階段が見えた。
・二億超えて、二億五千近くて草
・アスカ二億五千だから抜かすのもあるだろこれ!
もう少し。
もう少しで届く。
そうエボリューションが確信すると、アスカが吠えた。
「ラス1!」
最後に残ったメガオークに、アスカが炎の竜巻を放ち、巨体が炎の中に飲まれる。
安堵から一転このままではトリを取られて、差が開く危機感に襲われたエヴォリューションは焦燥に駆られながら、波を放つと同時に渦に変える。
魔力回復を待つ前渦を作ったので魔力が完全に枯渇して、気が遠くなるが食いしばって耐え、魔力回復と同時に水魔法で作った特大剣を振るった。
「獲った!」
最後にメガオークをエボリューションは仕留められた。
なんとかギリギリでトリをエボリューションは取ることができた。
・同接二億五千行った!
・アスカスと揃った!
・拮抗しとる! こんなん初めて見るわ!
最後のブーストで拮抗できた。
もう何も手立ては残っていない。
五層の終わりまで来たことで、配信はこれで本当に終わり。
もはやブーストが切れるまでにアスカを抜かせることを祈る以外にできることはない。
「みなさん、お疲れ様です。これにて配信は終了になります」
伊藤のエンドコールが終わり、配信画面を切られる頃になると数字の拮抗が切れた。
アスカの同接数がエボリューションの同接数を1超えた。
そこで配信画面が自動で切れる。
「負けた」
逃れらないような事実がエボリューションにのし掛かると、インカムに声が入る前のノイズが走った。
『よく頑張ったな。本当によく!』
谷崎の激励の声が聞こえると、何かを呑み込むような気配がインカム越しにエボリューションに伝わり、谷崎の言葉が紡がれた。
『……お前はまだ悔しいか?』
エボリューションにとってそれはわかりきった質問だった。
「悔しい……です」
心の中にある何も飾り気のない感情をエボリューションはそのまま口にする。
身も心も削りきって、あっと一歩及ばない。
残酷な負け方をしようとも、彼は諦めることができなかった。
『漢を魅せるな! お前は私が出会った中で最高の男だ!」
心の内を伝えると、感極まったような谷崎の震え声がエボリューションの鼓膜を揺らす。
彼の戦いは終わった。
ーーー
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