第17話 ワンサイドゲーム
黄金竜は取り巻きの竜から得た力に酔うように雄叫びを上げる。
「あれはなんだ? 取り巻き含めてあの竜の一部とでもいうのか。モンスターでなければ卑怯と詰りたくなってくる」
雄叫びを上げる黄金竜に不平を言いながら、剣道さんが雷撃を放つが、耐性があるようで、無傷で雄叫びを続ける。
「雷に対する耐性もあるのか。あの竜たちを吸収したということは、光と闇以外の全ての耐性を得たことになるな。攻略隊の面子ならばここで全滅が確定だ」
「竜には打撃と斬撃耐性がないので、我々ならば十分可能ですね」
「魔法が通用しない上でモンスターと戦うなど自殺行為だが、君の腕を信じよう」
「ご期待に添えるように最善を尽くします」
雄叫びを途切れると、例の如く、ブレスを放とうとしたので、跳んで距離を詰めると顎を殴り、ブレスを打つ方向を天井にずらす。
「もはや目で追えんな」
後方から剣道さんがぼやく声と共に土を踏み締める音が聞こえると、黄金竜が顎を振り落とし始め、魔力を頭上で感じたので大きめに距離をとり、避ける。
雷が落ち、その少し後に顎が落ちる。
大きな隙が生まれたので、脳天に向けて拳を振り下ろす。
「グガ!?」
黄金竜の予想以上に拳の威力が強かったのか、黄金竜は拳によって起こされた衝撃を堪えながら、驚き混じりの呻き声を上げる。
体に雷電し、燃え上がる竜巻を纏うと追撃を避けるためか、上空に飛び立つ。
属性魔法の鎧を纏われると、攻撃した瞬間に腕にダメージを負うため、おいそれとは手を出すことができない。
三重の属性魔法を結界をぶつけて相殺するのは風だけでも破られたことを考えると結界でなんとかしようとするのは無謀だ。
それを考えれば、選択肢は自然と負傷覚悟で魔法の鎧ごと殴りつけることだけになる。
S級ダンジョンのボスモンスターの攻撃を喰らった時は、ひどい負傷を負った記憶しかないが、腹を決めるしかない。
「ダメージは与えられないが、魔法の相殺なら任せろ!」
跳躍しようと思うと、鋭い雷撃が黄金竜に直弾し、片頬の一部だけ竜巻が解けた。
どうやら攻撃魔法と攻撃魔法はぶつけると相殺できるようだ。
攻撃魔法持ちではないため知らなかったが、相変わらず攻撃面において死角の無い魔法だ。
解けた部分が塞がらないうちに、跳躍した勢いそのまま拳を頬に叩き込む。
「ガアアアああ!!」
牙が折れた鈍い音が聞こえると、竜巻を消失させて、地面に墜落していく。
攻勢に転じる隙を与えないために、結界を足場にして踏み込み、至近すると角を掴んで追撃する。
拳の衝撃で背中から床にめり込ませて、黄金竜の体を固定することに成功したので、ダメージを稼ぐために拳を乱打する。
剥がそうと手を伸ばしてくるのを裏拳で弾き、一心不乱に拳を叩きつける。
黄金竜の手が来なくなり、息が上がり始めたので、拳を緩める。
すると黄金竜は体から力が抜け、息をしていないことがわかった。
念押しのために魔力の循環を確認したがやはり死んでいる。
拳を叩き込む衝撃で、黄金竜は体勢を立て直せなかったようで、俺が終始攻撃の主導権を握られたことが、勝因になったようだ。
「意外に手こずらずに勝てたな……」
ボスを倒したのでこの部屋のどこかに、外に出るための転移陣が出現したはずだ。
だが周りを見渡すが発見できない。
「ボスを倒したはずなんですが、転移陣が見当たらないです。剣道さん確認できましたか」
「いや見当たらない。周りにある柱の向こう側かも知れない」
剣道さんが柱の奥を見に行ったので、俺も竜の体から降り、周囲にある柱の奥も見るが無い。
もしかしたらこのダンジョンだけ転移陣がないのだろうか?
転移陣はどのダンジョンもボスを倒せば出現するはずのものなのでそんなわけはないはずだが。
「伊藤殿、転移陣はあったか?」
「ないです。これで見当たる場所は全部のはずなんですけど」
柱の奥からこちらに向けて歩いてくそう答えて、再度周りを確認する。
どこにも階段など見当たらないので、黄金竜がダンジョンボスではなかったはずはないのだが。
困惑していると周りの魔力が蠢くのを感じた。
見ると魔力が黄金竜の周りに集まり始めているのが見えた。
「こんなことがあり得るのか……」
「死んでから進化する前兆なんて」
ごく稀に進化するモンスターの報告は知っていたが、まさか死んでから進化が起こるパターンがあるとは思ってもいなかった。
魔力が集まると黄金竜の魔力の循環が心臓部分だけ復活し、一度四肢にある魔力が心臓部分に集まると胸が裂けて、波打つ心臓が出てきた。
心臓に魔力が集まると人の形を形成していき、瞬きをする間に、頭に一対の角、背中に翼、腰から尻尾が形取られ、竜と人を掛け合わせたようなフォルムのモンスターに黄金竜は進化した。
ーーー
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