第16話 完全体
地面に墜落した赤竜と土竜を動きを封じるために、身を起こす前に頭に拳を振り下ろして、地面にめり込ませる。
「グルアアア!」
追撃を掛けようと思うと、黄金竜が咆哮を上げて、雷のブレスを放ってきた。
攻撃する前に咆哮を上げるなんてわかりやすいなと思い、避けると雷電が近くにくると横に拡散したのでジャンプして避ける。
「わかってても初見なら当てる自信があったからか」
雷系は当たれば痺れるし、速度もずば抜けて早く、範囲も上下左右拡大させることができる。
今の一発で四属性の竜から傅かれるのも納得した。
「グアアアア!」
緑竜も復活したようで、咆哮を上げると、黄金竜のブレスで俺が反撃をしなかったから有効打になると考えたのか、風のブレスを放ちながら突撃をしてくる。
風のブレスは先端が広がっていくだけで遅く、避けるのは容易なので、そのまま避けるついでに片付けてしまうことに決めた。
風のブレスーー竜巻を避けると、結界で足場を作って一気に緑竜に近づいて飛び乗ると衝撃から逃れられないように手で鱗を掴んで頭を固定して殴打する。
脳天だったたので意識を刈り取るのに、成功し、トドメにダメ押しの一撃をもう一度頭に叩き込む。
魔力の循環が止まったことと骨が割れる鈍い音を同時に確認すると、飛び降りて地面に着地する。
「すごいなこれ」
地面には亡骸だけが残されるかと思ったが、緑竜は緑色の粒子になって黄金竜の方に向かっていき始めた。
困惑しながら見つめると、緑色の粒子は黄金竜に取り込まれて、大きな緑色のイミテーションが入った黒色の角が一対頭に生じた。
「グオおおお!」
体に力が漲るのか、黄金竜は雄叫びを上げながら、再度ブレスを放ってくる。
狙いが見え見えだったので避けられたが、ブレスに風属性が追加されて竜巻をともなっており、目を見張った。
「周りにいる取り巻きが倒されるたびにパワーアップしていくのか。 とんでもないモンスターだ」
一瞬先に黄金竜を倒そうかと考えたが、黄金竜にぶつかっただけで、取り巻きの竜たちが過剰反応をしていたことから、確実に死守しようとしてくることは想像に難くない。
それならば周りの竜を倒してしまった方が手っ取り早いだろう。
水竜については剣道さんに任せており、見たところ痺れさせて、雷魔法エンチャントさせた大剣で爆発を起こしてタコ殴りにしているところを見ると加勢に行くまでもないだろう。
他の二体を先にどうにかするかするべきだ。
幸いにまだ地面に頭は拘束された状態で、先ほど緑竜に体を固定して拳打ちつけて、二発で倒せたことを考えれば、今の状態から二体とも十分に倒せるはずだ。
一番近くにいた土竜に目星をつけて拳を繰り出すと、石造りの床ごと頭を持ち上げて突進してきた。
石造りの床は流石に土ではないので操作できないと高を括っていたが、石も可能だったらしい。
不足の事態だが予想以上に早く復帰する可能性も考えていたので、対策通り土竜の首に腕巻き付けて押さえ込む。
そこから殴打しようとすると、赤竜が抜け出したようで、炎を纏いながらこちらに迫ってきたので、殴打するのを中止して土竜を首を支点にして持ち上げて、赤竜に叩きつける。
ペースを乱されたこともあり、リセットするために一度土竜を手放して一息吐こうかと思うと、魔力が視界の隅で増幅するのが見えた。
そのまま方向を横にずらして土竜を振り切り、黄金竜が放ったブレスの射線上に、土竜と赤竜を移動させる。
土竜から手を離すと後方に下がって結界を張り、射線外に向けてハリウッドダイブする。
結界とブレスがぶつかり、結界が爆ぜる音を聞いた後に、背中にわずかにチリチリする感覚を感じながら起き上がると、赤色の粒子と土色の粒子が飛んでいき、黄金竜に新たに二対の角が生じているのが見えた。
「グアアア!」
黄金竜をこのまま叩こうと思うと、ついに剣道さんが倒したようで、口から煙と断末魔の叫びを上げる水竜が水色の粒子になって黄金竜の元に飛んでいく。
「グオオおおおおおおおお!!!」
水竜を取り込んで、もう一対角を生やし、一回り体が膨張した黄金竜は再度雄叫びを上げる。
「これで完全体か」
多少タフな見た目にはなったが、先ほどのように複数体を相手にして混戦になって不意の事態の連続に襲われるよりは遥かにマシだろう。
あと一息だ。
ーーー
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