第11話 トップ攻略者
完徹でハイになっていた大火に回復魔法を使うと、雑事をすまして、S級ダンジョン「羅生門」に向かった。
東京郊外ということで、森林が目立ち、いつものようにビル街の群れに紛れるように存在しているダンジョンばかりに行ってるので新鮮な気分になる。
ダンジョンを話し合い場所に選んだので、あわよくば攻略もと考えていると思っていたので、待ち合わせ場所にガチガチの攻略隊ではなく剣道さんしかいないのは意外だった。
「初めまして、剣道さん、ダンプロの伊藤と申します。今日はよろしくお願いします。よろしければこちらを」
剣道さんは俺から差し出された名刺を受け取ると、礼儀正しく自分の名刺を差し出してくれた。
割とダンジョン攻略者は名が売れた人でも名刺を持ってなかったりすることが多いのだが、トップということもありそういうところもちゃんとしているらしい。
「こちらこそよろしく頼む、伊藤殿。早速無作法ですまないが私はじっとしているのは落ちつかなくてね。ダンジョンで体を動かしつつ、話し合いをしてもらってもいいだろうか?」
「いいですよ」
どれだけ攻略する腕があるのか見つつ、話し合いをしたいということだろう。
剣道さんサイドは最初からこちらを勧誘しにきているため実力の上限の確認は必要なことだし、俺としてもできれば配信の約束を取り付けたいので剣道さんの機嫌を損ねることはしたくないので、拒否をするという選択はない。
「一つ質問なんですが、ダンジョンに潜るにしては人が少ない気がするのですが、何か理由が」
「伊藤殿がいれば魔力を温存する必要はないから、彼らは必要ない。私とあなたがいればこの話し合いはそれで十分」
ーーー
ダンジョンに入ると特にセーブする理由もないので体に強化をかける。
「伊藤殿、それは?」
「身体能力を強化する光魔法です」
「そんな隠し玉がまだ。それにこれは……」
そう目を剥いて言うと、剣道さんは俺の体を凝視する。
強化をすると体から放出される魔力の圧が濃くなって、ダンジョンの空気中の魔力と差ができ、俺の周囲だけ歪んでいるように見えるため、それが物珍しいのだろう。
「見た目は異様ですが、特に触れてどうにかなると言うものではないのでお気になさらず」
「すまない。魔力の圧があまりに常軌を逸したものだったから我を忘れていた。風来坊の多い攻略者たちもそれを見れば伊藤殿を畏れ敬うレベルだ。同じくアスカちゃんを理解する同志としては鼻が高いな」
「攻略者トップの剣道さんにそこまで言ってもらえるなんて、毎日ダンジョンに入ってる甲斐がありましたね」
若干剣道さん言葉に後半に不穏な響きがあったが、誇張表現か何かだと思っておく。
アスカファンだとは聞いてはいるので、感情が昂った故だろう。
アスカさんを利用するようでなんだか悪いがアイスブレイクに、アスカさんの話題を広げさせてもらうことにする。
「昨日のアスカさんの配信はご覧になられましたか」
「昨日は仕事があったのでアーカイブになったがもちろん見たとも! 昨日のアスカちゃんもやはり至高だった!!」
アスカの話題を振ると落ち着いた感じの振る舞いからは、想像できない勢いで食いついてきた。
まるで別人のようだ。
「見たか! あの大胆でありながらも隠しきれていない彼女の可憐さを!! 愚物を燃やし、火に照らされる彼女の美貌を!! ああ!! 結婚したい!!!」
剣道さんは矢継ぎ早に囃子立てるようアスカさんのことを褒めちぎると求婚し始めた。
ファンだとは聞いていたがここまでのものとは思っても見なかった。
というよりも口調は違うが求婚するこの姿勢に既視感がある。
「もしかして剣道さんは、ライブチューブで『アスカに人生を捧げたい』という名前で活動されてる方でしょうか」
「そうだが」
やはり推測通り剣道さんはアスカガチ恋ニキだった。
ーーー
よろしければフォロー、いいね、星お願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます