第7話 トップ攻略者からの勧誘


「また大広間ですね。こういう場所はモンスターが待ち伏せしている可能性があるので注意が必要です」


 昨日遭遇したメガオークとギガマーマンが形勢を立て直すために逃げ込んだと考えられる場所だ。

 俺が強化を使うと、おそらく戦闘が人の目で捉えられないものになり、見ているリスナーにとって非常につまらないものになるので、強化をかけずに進む都合がある以上、モロに直撃して負傷するのを避けるためにも一計を投じることにする。

 

「こういう場合は光魔法での目潰しが非常に有効です。光魔法で作れるフラッシュの特性上、自分が発生させたい任意の位置に発生させされるため他の魔法と比べて容易に目潰しが可能なんです」


 ・ほーん

 ・光魔法地味に強くね

 ・光魔法確かにその用途なら使えるけど攻撃系統一切存在しないのが痛すぎる

 ・近距離オンリーでモンスターと戦うのってほぼ自殺行為だからな

 ・火魔法の爆発の目潰し、手からしか出せない上に飛んでる途中でほぼ途中で潰されるからな、そら光魔法には勝てんわ

 ・火魔法使いのワイ、目潰しで光魔法に敗北する

 ・敗北者ァ!

 ・取り消せよ! その言葉!!


「少し眩しいですので、フラッシュに気をつけてください」


 リスナーにフラッシュに気をつけることを呼びかけ、ヒカリさんが目を手で覆うのを確認すると、奇襲するために隠れているだろう大広間の入り口でフラッシュを発生させる。


「ギョアア!?」「グオ!?」


「今だ! ヒカリさん、マーマンの方を頼む!」


 叫び声が聞こえ、入り口の両サイドから目を手で覆ったメガオークとギガマーマンが蹲るような形で姿を現すのが見えたので、雷魔法がよく通るマーマンをヒカリさんに任せて一気に攻め込む。

 できれば当初の予定の通りリベンジマッチといきたかったが、いかんせん他のモンスターもいる以上都合が悪い。

 2体は間引いた方が良かったかもしれない。


 メガオークと距離を詰めると、ジャンプして顎を蹴る。

 メガオークの首があらぬ方向に曲がると倒れ、それと同時に雷鳴が轟くのが聞こえた。


「ハア、ハア」


 ヒカリさんがこちらに走ってくる。


「伊藤さん、速いですよ」


「あ、ヒカリさん、すいません」


 奇襲に頭がいっぱいで自分とヒカリさんの実力差を忘れていた。


 ・草

 ・イトゥついに物理法則を無視する

 ・身体能力バグってて草

 ・イトゥマネ硬いだけじゃなくて攻撃も常軌を逸して草

 ・もしかして攻撃魔法がなければ、身体能力でカバーすればいいってこと!?

 ・ダンジョンどんだけ潜れば、そんなに体強化されるんじゃ、もうダンジョンに住んどるレベルだろ

 ・イトゥが缶詰してる事務所ダンジョン疑惑浮上

 ・SSS級ダンジョン『ダンプロ』のボスモンスター--イトゥ

 ・イトゥの激しすぎる動きでヒカリたその息遣いがエッチに

 ・たそリベンジ達成!

 ・エッチになる代わりに本懐を遂げて草


「いや、急がなきゃ行けなかったからいいですけど、魔力が尽きちゃって」


「魔力ですか。まだ他のモンスターの視界が塞がってるようだし、回復させましょうか」


「え?!」


 ・?

 ・?

 ・?

 ・【朗報】我らのヒカリたそ、イトゥの常識破壊でついに正気を取り戻す

 ・ファ!? 光魔法なら魔力が回復できるんけ? チートやん!

 ・光魔法アプデきちゃ!

 ・マジだったらぶっ壊れ魔法だろ

 ・イトゥ落ち着くんや、魔力が魔法で回復できるゲームは存在せんから


 時間もないので、彼女に手を向けて体の魔力の弁を開くイメージをして魔力回復を発動する。

 ダンジョンの空気中の魔力がどんどんとヒカリさんに吸い込まれるようにして集まっていく。

 ヒカリさんの体に魔力が十分充填されるのを確認すると、弁を閉じて、魔力回復を終了する。


「すごい! 本当に魔力が回復してる!」


 体の周りからビリビリと若干放電してるのが気になるが、本人も調子が悪そうではないで問題はないだろう。


 ・ヒカリたそ、スーパーサイヤ人2みたいになってて草

 ・魔力回復どころじゃなくて草

 ・素人のわかるくらいの魔力回復で草

 ・回復させすぎや

 ・光魔法やばすぎだろ

 ・いや普通にこれダンジョン攻略に革命起きとるでこれ

 ・光魔法極めればこんなチート使えるんけ、大器晩成型なだけで普通に強いやん光魔法

 ・ワオもダンジョンに行って、光魔法使えるようになって美少女に魔力注入してくるわ

 ・同接2億到達してて草

 ・剣道絢香:伊藤殿、是非とも我々とダンジョン攻略に挑んでもらえないだろうか。

 ・ファ! 剣道ちゃん来て草

 ・トップダンジョン攻略者から勧誘来て草

 ・イトゥ、ダンジョン攻略者デビューの話きとるぞ!

 ・気づけ、イトゥ!

 ・いやイトゥにはダンジョン配信して欲しいで、逆に剣道ちゃんを配信者として勧誘してほしいわ

 ・剣道ちゃん、配信者デビューくるぅ!?

 ・ワイは剣道ちゃんのお姿をもっと近くで見たいです

 ・イトゥマネ、剣道ちゃんを配信者デビューさせて下さい。お願いします、なんでもしますから(なんでもするとは言ってない)

 ・イトゥが攻略者に落とされるのか、剣道ちゃんが配信者に落とされるのか胸熱で草


「え、本当ですか? 剣道さんが! 是非とも後日お話しさせていただきたいです!」


 ・イトゥ「狩るか♤」

 ・マネージャーとしての本能が覚醒してて草

 ・ロックオン発動

 ・逃がさないわよ!


 すごいな。

 配信がバズってるとはいえ、トップ攻略者から声が掛かるなんて。

 攻略者として活動するのは流石に今の配信を含めると、完全にキャパオーバーなので難しいが、剣道さんはかなりの人気者なので是非とも一度だけでもいいからダンプロの配信に出てほしい。

 この後に詰めてなんとしてでも配信確約もしくは、配信者として活動してもらいたい。

 あまり時間を置くのはダメだし、向こう側に階段が見えることから一層はここまでだ。

 ちょうど1時間と時間的にもキリがいいので配信は残りのモンスター二体ーー雑魚敵の巨大種であるビッグムーンベア倒して一層を完走したところまででいいだろう。


「ヒカリさん、行けますか。あと二体です」


「ええ、今なら遅れをとる気がしません」


 俺がジャンプして正拳突きを放つと、横合いからヒカリさんが剣を投擲したようで宙を飛んでビッグムーンベアに当たった。

 目の前のビックリトルベアが額から血を流して倒れると、隣で雷撃が弾けたのが見えたと思うと、ビックムーンベアの上半身が消失しているのが見えた。


「雷魔法すごいな」


 ・覚醒のヒカリたそ

 ・レールガンで草

 ・うん、ちょっと待て。イトゥ、レールガンと同じ速度で動いてなかったか

 ・ワイの目には視認できん領域の出来事やで

 ・剣道ちゃん獲得のチャンスにイトゥ戦闘力がバキバキになる

 ・まだ上があったのが

 ・今のはダッシュではないウォーキングだ

 ・一層もう攻略しててワロタ

 ・そこトップ攻略者たちが2ヶ月費やした場所なんですが

 ・真にすごいのは雷魔法じゃなくイトゥお前じゃ

 

「一層完走しました! 今日の配信はここまでになります。皆さんお付き合い頂きありがとうございました!」


「また見てね、皆!!」


 ・おつ

 ・イトゥマネ、ヒカリたそお疲れ様でした

 ・おつ

 ・おつ

 ・よかったで、またの

 ・イトゥ、ヒカリたそおつ



 ーーー



「早く会社に戻ってアリサと剣道さんの件で色々と話さないといけないな」


「伊藤さん、S級ダンジョン配信したのにまだ仕事するんですか……」


 頭の中でこの後の予定を考えながら、車に足を進めていると、いきなり道を遮るように黒塗りのリムジンがこちらに飛び込んできた。


「あぶな! 何考えてるんですか!」


 危うく轢かれかけ、ヒカリさんが苦情の声を上げると、リムジンの扉が開いて、金髪の女の子が出てきた。


「メスガキCEO……!?」


 ダンジョン配信企業なら知らないものなどいない有名人が俺たちの前に現れた。

 


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