第2話

ここはシンの本拠地である『マフィアズガーデン本部』。そこのビルは北京では上位に入るほどの高さを有している。


 真っ黒な車体のBMWが到着する。


 中から出てくるは中国最大マフィア組織の娘。その青く、蒼色のチャイナ服が冷徹さ、冷静さを表している。群青色ともいえる髪の毛を肩まで伸ばしている。


 「多分、その報告が終わったらすぐにでもあいつらの所へ向かうんだろう?」


 車を降りたシンに、運転席の男が話しかけてくる。


 「そうだよ? 私ってば最強になっちゃうらしいからね。ここであのオッサン達片付ければ、あとはお金が入るだけ」


 「じゃあ、これが終わったら一緒に暮らそう。抗争だとか戦いだとか、何もない穏やかな生活にしよう」


 男は茜色のジャケットを羽織り、煙草の火を付け、ゆっくりとした口調で彼女と話す。


 まるで、想うように。


 「うーん、私とあなたは主人と運転手ってだけの関係なんだよ? しかもあなたの名前すら......そういえばあなたの名前なんなの?」


 「それも教える。だから、だからこそ、生きて帰ってきてくれ。あなたを幸せにできるのは僕だけだ」


 「なによ、改まっちゃって」


 それ以上会話はなかった。


 彼女はビルの最上階に位置するボスの部屋。そこに今日の出来事、得た情報、今後の動きを報告にいく。報告が終わった彼女はそのまま自分の部屋へと戻る。


 彼女はベッドに寝そべって運転手の男のことを考える。


 「静かなところって言ったって、私だって住みたい国はあるもん」


 そういってスマホをいじる。


 「東京か......」


 彼女の目には楽しさが窺えるキラキラとした目とその一方で、決意めいたものが浮かぶのがわかる。銃の手入れ、戦闘服兼チャイナ服の準備、夕食、入浴を終え、ベッドに潜り込み眠りにつく。


 彼女が次の朝に起きたのは、一通の着信があったからだ。


 バイブレーションを続けるスマホを半起きながら手に取り、電話に応じた。


 「申し訳ありません、シン様。もう少し早く対応できればと思ったのですが、彼のBMWがいつまで経っても見えないので嫌な予感がして、そうしたら奴らから脅迫が......」


 「すぐに向かうよ」

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