私から見た、キミの姿
「いいえ…たぶん、違うと思う」
「え…?」
――私から見たキミの姿は、儚げだった。
幽霊のように、現れては消えてしまいそうで…。
『き、君こそ何だよ!ここはどう見たって学校だろ?』
初めて会った時、そんなことを言った。
――茜色の陽が差す裏庭。
窓から入ってくる、穏やかな夏の風。
私は夕暮れの部屋にキミとふたりきり。
最初は、キミが”学校の幽霊”とかなのかもしれない…と本気で思っていた。
幽霊なら、私の部屋に突然現れた理由も説明が付くし。
でも…どうやらキミはちゃんといるらしい。
「最近、気付いたんだ」
「…?」
「キミと知り合う前の、記憶…」
私は、何かとてつもなく重大な事実を――。
「…思い出せないんだ。何も…」
「……」
「私には多分だけど――家族がいて、友達もいて…きっと幸せな日々を、送ってたはずなんだよ」
私は彼の目を真っすぐ見据えて言った。
彼にも心当たりがあるようで、ゆっくりと頷く。
「でも今は…どう?」
私たちの他に、誰もいない。誰も来ない。
「こんな世界、おかしいよね?」
私が言うと…彼はただ、困惑した。
…ここもきっと私の部屋じゃないんだろう。
というかそもそも、何を根拠にここを私の部屋だと判断したのか。
「いつからかは分からないけど、止まったような時間を私たちは過ごしてる」
それもこれも、全て――
「…きっと、悪い夢なんだよ」
私はなにかイカれてしまっている。
「……夢?」
「そう。…深い深い、夢」
終わりの見えない夢。
――螺旋のように続く世界。
「ねぇ…」
気付けば私の目は、涙で溢れていて――
「わたし、どうしちゃったんだろう……」
わたしは…わたしは…
「…大丈夫だから」
その時。
「…僕が、いるから」
泣き崩れた私の身体を、彼がそっと――
抱きしめた。
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