Deep-Neuron-Apoptosis

ShiotoSato

僕から見た、君の姿

 ――僕から見た君の姿は、不思議だった。

ここはどこからどう見たって、学校の教室じゃないか。


それなのに君は。


『あなた…誰!?私の部屋に、勝手に入って来ないでよ!』


初めて会った時、そんなことを言った。




 ――茜色の陽が差す校庭。

窓から入ってくる、穏やかな夏の風。


僕は夕暮れの教室に君とふたりきり。

君には、ここが自分の家に見えるらしいけど。


でも…もうどっちでも良かった。


「なあ、その…」


「なに?」


「君の言う通り、確かにここは学校じゃないのかもしれない」


一番前の席に座っている彼女へ、僕は言った。


「色々と不自然なんだ」


「…不自然?」


「どうして、部活をしてる生徒がいないのか」


夏休みのはずなのに、誰の声も聞こえない。


「どうして、ここには僕たちしかいないのか」


机とイスは、僕たちの分しか無い。


「どうして、僕らは一日中ここにいるのか…」


それもこれも全て――


「…君の家だとすれば、説明が付く」


つまり、僕が”おかしい”んだ。

ここは学校なんかじゃない。


僕はなにかイカれてしまっている。


そう思った途端、座っているイスや机――あらゆるものが得体の知れない何かに感じられて、僕は恐怖におののいた。


でもそんな僕の考えを、彼女は――。


「いいえ…たぶん、違うと思う」


優しく否定した。



















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