第19話 支離滅裂
高校3年生は自分の将来を考え始める最初の第一歩だ。就職するのか進学するのか、それ以外の選択で自分のやりたい事を叶えるため何をするのか、未来に向けて何らかの決断をしなければならない時だ。
俺は京都の仏教系の大学に進学すると決めていた。幼い頃から龍間寺の住職になる未来は考えるまでもなく当然の事だった。当たり前の様にそう思って来た。
野口は高齢のため畑を手放そうとしているじいちゃんを説得して、その畑で花を育てようと思っているらしい。ひまわりのお陰ですっかり園芸に目覚めてしまった野口は大学も園芸学部のあるところを選ぶと言っている。
スーちゃんは園芸の専門学校に行くらしい。恐らく野口が育てた花を活用出来るよう手助けするんだと思う。二人はこの先も一緒に生きていくつもりだ。何も言わなかったが、二人を見ているとそれは当たり前のことの様に見えた。
野口とスーちゃんがうらやましかった。二人でいる未来が自然で当然の事だと考えている二人が。
みんなそれぞれに考えて決断していた。
梅は将来のことについて何も話さなかった。進学するのか就職するのかも言わない。
俺が一番気になっていた事。それは、梅の将来に俺はいるのか? だった。
友達に戻れば一緒にいられると思っていた。でもこの先友達としていつまで梅のそばにいられるのだろう。梅の将来よりもその事ばかりが気になった。そしてそんな自分に失望していた。
野口は俺と同じく京都にある大学を選んだ。スーちゃんは家から通える学校を探したようだ。
卒業したら俺も野口も京都に住む。同じ関西圏だし日帰りも出来る距離だ。スーちゃんにも梅にもいつでも会える。
でも実際の距離じゃない。男女の距離が問題だった。
中学の頃はそれが俺と梅を引き離した。だから距離を無くしたかった。男も女も関係ない、そんな関係になろうとした。
でも梅に彼氏が出来てしまったら? 梅が結婚してしまったら? それでも俺は友達でいられるのか?
ただ梅と一緒にいたかった。ずっと二人で笑ったり喧嘩したりしながら、ずっと梅を見ていたかった。
でもそれは無理だ、梅はどんどん俺の中で女になっていく。それをただ見ているだけで満足出来るのはいつまでだろう。いやすでに我慢出来なくなっている。
本当はずっとわかっていた。
梅が欲しい。梅が欲しかった。誰のものにもなって欲しくない。そばにいればいるほどその思いは強くなる。俺だけのものにしたくてたまらなかった。心も身体も。
本当はずっとずっと前から。
色んなことがわかっている。それなのに自分がどうすれば良いのか、それが全くわからなかった。
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