第13話 梅想い 2 【side 梅】
何もしないまま高校の2年になった。
スーちゃんとリョータは同じクラスになったそうだ。超うらやましかった。
うらやましがるだけで、実際は何も行動出来ていない。スーちゃんには良い加減にしぃやと呆れられ、リョータにももう忘れられてるかもと独りで泣いた。
ウジウジするのにも嫌気がさした頃、スーちゃんがリョータの家『龍間寺』で子供たちを対象にしたお祭りがあると教えに来てくれた。出店で焼きそばを焼くから手伝いに来いと言う。
「人手がいるから助っ人呼んだって言うから。私と梅ちゃんが従姉妹やったこともそこでみんなにわかった事にしたらエエやん」
スーちゃんは野口やリョータに私と従姉妹である事を黙っているのが辛そうだ。申し訳ないと思う。
それにそろそろ何とかしないと本当にリョータの記憶からアタシが消えてしまうだろう。
「わかった。行く」覚悟を決めた。
スーちゃんは喜んで
「みんなには内緒にしとくわ。ドッキリサプライズやからー」と満面の笑みを浮かべた。
「何持って行ったら良いの?」と聞くと、
「身体一つで来たらエエねん。梅ちゃんに会えるだけで二人とも喜ぶでー 焼きそばなんか私がナンボでも焼いたるから、気にせんときっ!」
スーちゃんは自分の胸をドンと叩いてゲホッゲホッと咳き込んだ。
アタシはスーちゃんが大好きだ。
ひまわりみたいなスーちゃんが。
ヨシッ!気合いや!アタシも胸をドンっと叩いてみた。ゲホッゲホッと咳き込んだ。
お祭りの日、スーちゃんに指定された時間に龍間寺にやって来た。ドキドキしながらお寺の門を潜る。久しぶりだ。子供だけでなく大人も沢山集まっていた。
途中参加の方が準備とかでバタバタせんとゆっくり会えるから、とスーちゃんに言われたのでもうお祭りは始まっているのだろう。焼きそばの屋台は何処かなとキョロキョロしていると、遠い視線の先にリョータの姿が映った。
思わずそばにあった大きな木の影に隠れる。
お寺の裏手にある墓地の入り口にこちらを向いてリョータが立っている。向かい合う様に佇む髪の長い女の子の後ろ姿が見えた。
誰やろう……もしかして彼女?!いやそれならスーちゃんが話してくれるやろうし。
ついつい覗き見の様に隠れたまま二人を伺った。女の子の肩が震えて両手で顔を押さえた。
泣いてる……?!
リョータは女の子の肩に手を置いて慰めている様だ。
告白されたとか?!嬉し泣きか?振られ泣きか?思わず木の影から身体を乗り出した瞬間、
「梅?!」
リョータに見つかった。慌てて逃げる。
「待てって! 梅ー!」
リョータの声が聞こえた。無理、恥ずかしいっ!!こっそり覗き見してた…嫌や、カッコ悪過ぎる……
全力で走った。日本新記録ぐらいは出てたかも知れない。とにかく無我夢中で駆け抜けて家まで逃げ帰った。涙で顔がぐちゃぐちゃだった。
その後やって来たスーちゃんは布団を被って泣いているアタシを見て
「何も言えねー」と呆れ返った。
女の子はスーちゃんの後輩で、あのお寺に小さい頃亡くなった弟のお墓があると言う。
昔一緒に豆大福を食べた女の子だろうか?リョータの弟が心配してた子。
その子が今度引っ越しするのでお墓参りに来ていたらしい。これまでの様に直ぐに弟に会いに来れなくなるからお願いします、と泣きながら頼んでいた所だった様だ。
「だから別に梅ちゃんが気にする様なこと何もないんやし、別の機会に高木に会ったらエエやん」
スーちゃんはリョータを高木と呼ぶ。野口のことは野口君と君付けなのに。
「……もうアカン。いやらしく覗き見とかしてんの見られたもん。絶対バレた。リョータに嫌われた」
「高木の気持ち、何で勝手に決めつけんのよ。高木に聞かなわからんやろ」
スーちゃんがまた呆れる。
わかってる。言われんでもわかってるのに…何でわかってんのに同じ事してしまうんやろ……
アホや あー アタシは アホやー
心の中で叫んだはずが声が漏れていたのか、
「アホにアホ言うもんがアホや」
スーちゃんが答えた。それも前に誰かに言われた様な気がする。
「アホにアホ言うて何が悪いんっ!」
スーちゃんに八つ当たりしてまた布団に潜り込んだ。もうリョータに会いに行く勇気は出なかった。
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