第11話 桃李成蹊
高校は野口と同じ県立高校を受けた。家からは少し遠くなるが高校は同じところに通いたいなと以前から二人で話していたからだ。
梅は家から一番近い公立高校に行くらしい。また三人同じ学校でひまわりを育てたい、という俺の密かな願いは叶わなかった。
卒業式の日、梅と目が合った。
お互い小さく手を振ってバイバイしただけで終わった。それでお終い。さよならだ。
友達以外の関係で一緒にいられる方法がわからなかった。恋人とか彼女とか、そういう言葉を二人の間に持ち出すことは梅を傷つけてしまう気がした。
嘘だ。それはただの言い訳。本当はそんな目で梅を見ている自分を知られるのが怖かった。だから梅への想いから逃げた。見ないふりをした。
そんな風にして梅との友情を自分で終わらせてしまった。
高校では野口と同じクラスになれなかったが、野口と俺は小学校の頃のように、また女の子を入れた三人組になった。
岩下李(すもも)。俺と同じクラスで野口とは中学時代からの友達だった。
野口は中学の時、男なのに園芸部に入って学校でひまわりを育てていた。しかも部員は三年生の先輩がいなくなった後、野口ひとりになったらしい。廃部になりそうだったところに李、スーちゃんが入部してくれた。
スーちゃんは2年の時それまで所属していたソフトボール部を辞めて園芸部に入部した。更に俺の幼なじみの水川あゆむ、あゆむちゃんも新入生として野口達と同じ中学に入学し、園芸部に入っていた。
不思議な偶然だったが、スーちゃんとあゆむちゃんが仲の良い先輩後輩だった事もあり、俺と野口とスーちゃんは仲良くなった。あゆむちゃんも時々俺の寺で行事に参加したり、夏の肝試し大会なんかで野口やスーちゃんと一緒に遊んだ。
高校でも園芸部に入った野口とスーちゃんの手によって、高校の花壇でひまわりが花を咲かせた。
梅が見たらきっと同じような笑顔で笑うんだろうな、と太陽に向かって大きく笑っているようなひまわりを見て思った。
梅に会いたかった。
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