終戦

チームヴィクトリアvsチームルーザー 決着

 第一試合。

 山田やまだ朝右衛門あさえもん吉睦よしむつ対ジャック・ド・モレ―。

 勝者、山田朝右衛門吉睦。


 第二試合。

 アステリオス対武蔵坊むさしぼう弁慶べんけい

 勝者、武蔵坊弁慶。


 第三試合。

 アタランテ対ヨハン・ゲオルク・ファウスト。

 勝者、アタランテ。


 第四試合。

 ギルガメッシュ対エルキドゥ。

 勝者、エルキドゥ。


 第五試合。

 カルナ対哪吒なた

 勝者、哪吒。


 第六試合。

 ハサン・サッバーハ対シャルロット・コルデー。

 勝者、ハサン・サッバーハ。


 そして最終戦、第七試合。

 ソロモン――ゲーティア対アイザック・ニュートン。

 勝者、アイザック・ニュートン。


『皆様、ご覧頂いておりますでしょうか。全七試合が終了した今の結果を! 誰が予想していただろうか、この結末を! 敗北に敗北を重ね、真の勝利を得られなかったチームルーザー。まさか、まさかの大逆転! 通算成績三対四! チームヴィクトリア対チームルーザー! 勝者は……チームルーザー!!!』

 誰が予想など出来ようか。

 誰が想像していようか。

 相手は絶対強者、チームヴィクトリア。

 チームレジェンズの登場まで王座を温め続け、その後も総合成績二位の座を譲らなかった圧倒的強者を相手に、今まで一度の勝利も収めなかったチームが、勝利をもぎ取ったのだから。

 まさしく下剋上。

 もう賭けだけのチームだなんて言わせない。もう、金儲けだけのチームなんて言わせない。

 チームルーザーは正真正銘、強豪チームの仲間入りを果たしたのだ。

 ゲーティアの勝利に備え、駆け付けた強豪チームを率いる監督らは、そそくさと踵を返しながら、チームルーザーへの警戒を強め、彼らへの対策を考え始める。

 チーム結成からようやく果たした初の勝利に、南條なんじょうは天を仰いで笑い、安心院あんしんいんはそんな彼に抱き着いて泣いていた。

 ポラリスは何となく、呆れ顔ながら拍手を送っている。

「おめでとうございます、南條監督。遂に、本物の勝者になりましたね。ですが、本番はこれからです。チームヴィクトリアなんて古株は、いつしか超えられて当然の壁。これから幾つものチームが、あなた方を本気で潰しに来ます。それでも勝って下さい。そしてまた、今度は正々堂々と挑んで来なさい。チームレジェンズは全力で以て、あなた方の挑戦を受け入れます」

「ケッケッケッ。現王者の言葉、痛み入るなぁ。だったらてめぇも、俺達が挑戦する時にゃあ、引き籠りを卒業しとけよな。チームレジェンズに勝ったって、てめぇに勝たなきゃ意味がねぇ」

「はい。全力で応じましょう」

 かつて交わした義理の握手とは、また違う。

 今度は互いの健闘を祈って、硬く、強く握手する。

 未だずっと泣いている安心院に拳骨で小突いた南條は、そそくさと監督室の扉を開けた。

「さぁこれから勝利会見だ! 行くぞ、安心院! てめぇいつまで泣いてやがる!」

「だって、だってぇ……」

 先行く二人を、ポラリスは見つめる。

 隣り合って歩く二人の背中は、これまでずっと苦楽を共にして来た雰囲気が滲み出ていて、そこに入るのは誰にも出来ない様に感じられた。

 こうして二人を直に見て、あの二人だったからこそ追い詰められたのだと納得する。

 そして、ポラリスもまた踵を返す。

 ずっと兄に代行させていた監督の仕事をしなければ。そしていつか、必ず来るだろう挑戦者に勝つための作戦を、用意しておかねば。

 でもまずは――

「髪、切ろうかな……」

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