ゲーティアvsアイザック・ニュートン 決着
【我を倒す数式? 正気か? 貴様の斥力、引力。全て耐え切った。貴様に我を倒す術など――】
ニュートンは指を左右に振り、チッチッチッ、と舌を鳴らす。
最初に入場して来たように天を指差すと、その指でニュートンは自らのコメカミを小突いた。
「かつて、俺は言った。
【ほざけ!!!】
――“
ゲーティアの咆哮に呼び寄せられた悪霊が、ニュートン目掛けて襲い掛かる。
高名な悪魔を
名を持たぬ悪霊達が、怨念を漏らしながら迫り来る。
自身の目の前に滝のように降り注ぐ重力壁を展開したニュートンは、襲い来る悪霊らを圧し潰しながら、リンゴ色の双眸を輝かせて、両目を大きく見開いて頭の中の数式を形にしようとしていた。
重力の防壁を突破出来ない悪霊らの情けない姿を見せ付けられ、ゲーティアは口内に混沌を蓄える。
正体不明の漆黒が渦を巻いて口内を巡り、解き放たれんとした瞬間。ニュートンは咄嗟に重力の防壁を解除した。
【“
解き放たれる大規模な壊光線。
対してニュートンは自らゲーティアへと引力を働かせ、懐に潜り込む事で光線を回避。ゲーティアの側面を取ると、斥力を付与した拳で下顎を打ち上げ、口内で壊光線を爆散させた。
爆発に巻き込まれ、ニュートンも吹き飛び、壁に叩き付けられる。
【忌々しい……鬱陶しい……悪魔に虐げられるだけの人間風情が……! 我々の叡智が無ければ、何も出来ない人間風情がぁぁぁっ!】
「かの、ガリレオ・ガリレイは言った。私は、何も学ぶべきものが無い人ほど、愚かな人に会った事はない、と。智慧を与えるとおまえは言った。だがおまえは、智慧を与えた人間が何をして来たか、何を成し遂げて来たかまるで学んでいない。おまえ以上の愚か者は、此の世にはない」
【吠えていろ! 下等な種族は、吠える事ばかり覚える! 貴様らは昔より我々に財宝の在り処を訪ね、智慧を求め、人間ならざる力を求め、欲望のままに使役して来た! その代償に、どれだけの犠牲を払って来たのかもな……愚かなのは貴様らだ、人間! 愚者! 愚者! 愚者! 貴様らの計算など、我が直々に叩き潰してくれる!!!】
巨翼を広げ、ゲーティアは飛翔。
表会場上空まで飛び上がると、目の前に魔法陣を出現させ、暗黒を集わせた。
全身で見開く七二の目が、禍々しく光る。
【周囲を巻き込もうと、我には関係ない。次は全力だ。その五体、塵芥に変えてくれる!】
「既に答えは出ている。後は
ニュートンは手を頭上と、その真下に来るように構えた。
両手の間で小さな黒い点が出来上がり、徐々に大きさを増していく。
互いにこれで最後と決めた。
正真正銘最後の一撃が、解き放たれる。
【“
「“
先程の数倍大きい光の束が、小さな黒い光球を呑み込む。
が、実際に呑み込んでいるのは光球の方で、ゲーティアの放つ光線を呑み込みながら、ゆっくりと、しかし着実に、ゲーティアへと迫っていた。
ゲーティアへと近付き、光線を呑み込む毎、光球は闇を増し、大きさも膨れ上がっていく。
【馬鹿な……何故、何故我が押される! 我は魔王! 魔王ゲーティア! 神に等しき我に背くなぞ、絶対に――】
「この宇宙に存在する全ての
【貴様……貴様ぁぁぁっっっ!!!】
ゲーティアはまた、抗い切れなかった。
これもまた作戦であると理解しながら、ニュートンのあからさまな挑発を無視出来なかった。
もう意識を保つのもギリギリなので言わないが、余裕があったら言っただろう。
おまえの敗因はただ一つ。人間の智慧を馬鹿にした事だ、と。
光線が呑まれ、魔法陣が崩壊。逃げる暇もなくゲーティアの体が呑み込まれ、中心部へと引き寄せられていく。
引っ張られた先は無間の闇。光さえ呑み込み、閉じ込める無限の牢獄。体は分子レベルで崩壊し、無痛の死だけが待っている。
【馬鹿な馬鹿な馬鹿な! 我は、我は魔お――】
ゲーティアを呑み込んだ光球が消える。
静寂が場を包み込み、誰もが言葉を失って、現実を受け止めきれていなかった中、今まで空気だった実況の声が、静寂を突き破った。
『転生者大戦! チームヴィクトリア対チームルーザー! 最終第七試合、勝者は――ニュートォォォンッッッ!!!』
「
割ったような歓声が響く。
地下の奥底で大の字になって倒れていたニュートンがドローンに気付き、拳を突き出してやると、歓声がまたドッと沸いた。
最終試合。勝者、チームルーザー。アイザック・ニュートン。
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