続・最終、第七試合
第七試合 途中
「あ、あの人がガリレオ・ガリレイ……? でも、何でここに?」
「私が連れて来ました」
突然の来訪者に
伸び放題の髪に質素な服装。長らく外に出ていないのだろう暗い雰囲気と、ストレスで真っ白になってしまった頭髪とですぐには気付けなかったが、ゆっくりと、面影を辿って気付いた。
「チームレジェンズの……ポラリス監督?」
チームルーザー初の相手にして、現在ランク最上位の監督、ポラリス。
チームルーザーとの試合以降は、若干鬱になって兄に監督代行をさせていると聞いていた。表に出て来るなんて、数か月ぶりではないだろうか。
まぁ、メディアの前でないから辛うじて出て来れた、と言った雰囲気ではあるが。
「ど、どうしてここに? っていうか今、ガリレオを連れて来たって……」
「……本当は連れて来るつもりでは、ありませんでしたが……ただ、そこの奇策男に言われまして。ガリレオに、ニュートンの事を話してみろ、と。そうしたら、ガリレオが行くと言い出して、無理矢理私も……」
「ケッケッケッ。俺達がトラウマ植え付けた女の顔を久し振りに拝みたくてなぁ」
意地悪な事を言ってるが、多分、
ただ――
「南條はわかってたの? 今回の戦いで、あの悪魔……ゲーティアが出て来るって」
「確証はねぇよ。だがニュートンがソロモンを追い詰めた時、奴が最後の切り札として使って来る可能性はあった。そしてその悪魔に、ソロモンが呑み込まれる事もな」
「やっぱりあれは、暴走してるんだね……」
「ゲーティアってのは、そもそも七二の悪魔を従えた魔王だ。地上全てを破壊する奴、神は魔術書に変え、七二の悪魔と共に封印した……だが神々の国でも悍ましいとされたそれを地上に残すべく、神は一人の人間に魔術書を扱えるだけの知識と叡智を与え、王にした……それが、ソロモンの正体だ」
「じゃあソロモンは、ただ利用されてただけって事? そんなの……」
「無論、ソロモンも了承済みだ」
「そうだよね……え? えぇっ?!」
驚いているのが自分だけとわかって、安心院は恥ずかしさのあまり赤面。
机に突っ伏し、無暗に脚をバタバタ降り始めた。
「だが、ゲーティアだって馬鹿じゃあねぇ。奴はネチネチネチネチネチネチネチネチ、長ぇ
ケッケッケッ、と南條は笑う。
が、状況はそんな楽し気なものではない。
異世界転生者を呼び出せる今の世に、本物の魔王が復活するかもしれないのだから。
「それで、ニュートンは勝てるのですか?」
「さぁなぁ。だが、おまえもわかってるだろ、ポラリス。応援ってのぁ、誰の心にも刺さるもんだ」
観客席がざわめき始める。
見るとガリレオだけでなく、他にも転生者が揃っていた。
天動説を覆し、地動説を提唱し、証明したニコラウス・コペルニクス。
自らの名前が付いた法則を見出し、天体物理学の先駆者とされるヨハネス・ケプラー。
そして、科学の父にして天文学の父、ガリレオ・ガリレイ。
戦場に立つアイザック・ニュートンも合わせて四人。科学革命の中心人物とされた四天王が、ここに揃った。
それで何かしらの奇跡が起きる訳ではない。
ニュートンの腹の傷が、塞がる訳でもない。
国も時代も違う学者達に、歴史的繋がりこそあれ、直接的繋がりはない。
が、国も時代も違いながら、同じ分野を追い求め、同じ数字と格闘し、同じ星を見上げ、研究して来た同じ科学者という種族として、湧き上がるものがニュートンにはあった。
五指の腹を合わせ、掌を離す形で印を組み、リンゴ色の双眸を輝かせる。
「かつての俺は言った。プラトンは私の友。アリストテレスは、私の友。しかし最大の友は、真理である――訂正しよう。コペルニクスは俺の先輩。ケプラーは俺の理解者。そしてガリレオ・ガリレイは、俺の父! そして、最大の友は……星が繋げた、
我ながら、臭い台詞を言った。
シェイクスピアならば失笑し、偉大なるホメーロスならば鼻で笑ったに違いない。
が、それが堪らなく心地いい。
【まだ抗うか、人間……諦めよ。貴様は贄。魔王ゲーティア復活のための、最初の贄……!】
「魔王? は、知るか。此の世に本物の魔王なんて要らん。要るのはせいぜい第六天の魔王を騙る天下の大うつけか、シューベルト作曲の歌だけでいい」
【その体で、我に勝てるとでも? 人間如きが、我に、魔王に勝てるとでも? 愚か、愚か……!】
「愚かはどっちだ。数学に、科学に、星に、魔王如きが敵うものか。勉強してから、出直して来な!」
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