カルナvs哪吒 決着

 下顎を打たれ、脳を揺らされる哪吒なたの頭の中は、混沌と掻き混ぜられていた。

 景色が歪み、回し蹴りを繰り出した体はフラついて、上手く立ち止まる事が出来ない。

 光が、音が、熱さえも混沌に捻じ曲げられ、歪まされた世界の中で、唯一真っ直ぐに聞こえて来たのは、やはりと言うべきか、奴の声援だった。

「ぉ……ぉぅ、お……応、え……なん、くぁ……! ――ってんじゃねぇ!!!」

「“創造と破壊の輪廻ブラフマーストラ天皇大帝デーヴァ”!!!」

 繰り出された雷霆の投擲。

 まさに破壊そのものを投げ付けられたような圧迫感。

 落ちて来るそれを回避するなど、到底不可能と諦めそうになった自分の脚を叩き、哪吒は未だフラつく体で回り、投擲された破壊の権化たる雷霆を文字通り、紙一重で躱した。

 直後に雷霆が爆ぜ、会場全体の大気が焼かれていく。

 爆ぜる雷霆。大気を焼き尽くす炎を背中に受けて、槍を投げた体勢のまま固まっているカルナへと飛んで行った。

 哪吒の体が黒い炎に包まれ、三面六臂の姿へと変貌を遂げる。

「“六鬼ろっき火尖鎗かせんそう”!!!」

 投擲した槍は、カルナの意思で戻って来る。

 既に槍はカルナの意思を受け取り、戻り始めていたが、到底、間に合いそうになかった。

 が、諦めはしない。金色の覇気を右手に纏い、西の奥義を繰り出さんと引いた。

「“哪吒三太子ナラクーバラ毘沙門天斬剣ヴァイシュラヴァナ”!!!」

――“創造と破壊の輪廻ブラフマーストラ”!!!

 交錯。

 互いの攻撃は衝突する事なく、通り過ぎた。

 が、決着は付いた。

 哪吒の纏った炎が掻き消えたのと同時、繰り出したカルナの右腕から全身が斬り刻まれ、右腕に関してはバラバラに斬り落とされた。

 全身斬り刻まれたカルナの体は無力に落ち、熱砂に受け止められる。

 今まで熱いと感じなかった熱砂の熱を感じた時、カルナは、自身の敗北を察した。

「すまない、ヴィクトル……」

 カルナのすぐ側に降り立った哪吒は、フラフラとよろめきながらカルナへと歩み寄る。

 光を奪われた目が半分だけ開いていたので、そっと、目蓋を閉じてやった。

「よぉ。楽しかったぜ、カルナ……また、戦おうな」

『転生者大戦! チームヴィクトリア対、チームルーザー! 第五試合、勝者は――哪ぁぁぁ吒ぁぁぁっっっ!!!』

これぞ最高のエンターテインメントだThis is the best entertainment!!!」

 戦場の中央で高々と拳を上げる哪吒へと、哪吒コールが響き渡る。


 第五試合。勝者、チームルーザー。哪吒。

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