第2話 夜の風、交わす約束、高揚
あお君と再会して数日。あの日以来あお君からの連絡のない日々が続いた。朝起きて仕事に行って、夜に帰って来る。時間に追われるような日々の中で、段々とあれは本当だったのか?と疑問に思うことも増えていった。けれども、あお君との再会は夢でも幻でもなく実際にあった出来事。スマホの連絡先にあお君の名前が増えたことが何よりの証拠だ。
7月になり昼間は気温が高いけれども、今日のように夜は涼しい日もまだまだ多い。室内はエアコンを点けるか悩ましい状態なので試しに窓を開けてみることにした。
「今週もやっと金曜日が終わったー!」
ベッドに飛び込んだ私はスマホをつけた。待ち受けに表示されている時計は23時を回っていて、特に忙しかった一週間を締括るように思える。疲れに支配された身体は今にも寝落ちしそうだ。枕に顔を埋めてうつ伏せになっていると、スマホのバイブ音が聞こえた。
身体を起こし、画面を確認するとディスプレイにあお君の名前が表示されている。メッセージアプリの通知をタップするとあお君からのメッセージが来ていた。
「来週の花火大会だけど、何時頃に待ち合わせにする?」
来週末に迫った花火大会。一週間があっという間に終わったということはその分、花火大会までの日数も少なくなったということで、私は慌ててカレンダーを見上げる。今日は7月2日の金曜日。あと数分で7月3日になるタイミングだ。私はスマホで花火大会のサイトを調べ、打ち上げ開始の時間を探す。打ち上げ開始は......19時だ。場所取りのこととかを考えたら、少し早い時間にあお君と合流したほうがいいのかな?と考える。
「打ち上げは19時だけど、少し早いほうがいいかな?」
あお君の反応を待ってみる。フキダシアイコンが出てから待つこと数十秒、あお君からの返信が来た。
「一時間くらいあればいいかな?多分、打ち上げ直前だと混雑してるだろうし」
一時間か。確かあの花火大会ってこの辺で一番規模の大きい花火だから一時間前でもだいぶ混雑してたような......
「ちょっと早いけど、夕方5時に駅でどう?私も久しぶりに行くんだけど、確かすごい混んでいた気がするから。あと、いい位置で見ようとしたら6時だとちょっと不安かなって思うんだ」
ちょっと思い切って早い時間に待ち合わせすることを提案してみる。早すぎないか不安になる。
「5時か...いいよ!その日、ほかに予定はないし!」
とりあえず一安心。そうと決まれば、明日明後日で出来る準備をしてしまおう。
「じゃあ、5時に駅の時計のところで待ち合わせで!」
「翠鳥、いつもギリギリなんだから、遅れんなよ」
私の返信にすぐ、あお君から返事が来る。
「いつも、"時間に遅れる!"って直前にメッセージを送るのはあお君のほうじゃん!」
「あお君こそね!」と一言だけ最後に返信すると、連絡の往復は終わった。私はスマホを置いて、横になる。
明日、晴れてたら服を見に行こ。あお君と花火を見に行く日に着る服を。
夏の夜、君のとなり、光の花 東西秋冬 @Tozai_Aki
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