第3話 倉庫に隠された日記
夕焼けの橙色の空気に包まれながら、全身から冷や汗が溢れてくるのを肌で感じつつ、屋敷の玄関内までたどり着いた。
「はぁ……っ、……ぅ」
膝で呼吸しながら、頭痛がさらに増していく。
――け、て。
「う、くぅ…………っ、なんなんだよっ」
いままでにしてもずっとずっと声が頭蓋に響いてくる。
頭蓋をピッケルで頭をかち割られそうな感覚がずっと続いている。
「ああ、チクショウ……一旦、部屋で寝るか」
息を吐いて、鮮一は巡りの悪い脳に無理やり思考をしようとする。
夜に捜索チラシを配るのだって慣れている。
今日も行うことに意味があるのだから問題はないはずだ。すると、耳元に何かに息を吹きかけられたように、頭痛の原因の声が聞こえた。
――ダ、メ。
今まで、はっきりと鮮明に聞こえた。
落ち着きもある可憐な少女の声。
――私の声を、聞いて。
視界が一瞬に眩むのを覚えるのと同時に脳が急に白く煙る感覚を抱くと、痛みが脳からすーっと引いていくのを感じて、手を額からどける。
「――そう、だ。行かないと」
靴を脱いで爺さんの本の倉庫へと向かって歩いていく。
少し長めの廊下を通り、いつも太陽が当たらないようになっている倉庫に入るのも久しぶりだ。
「……どこだ?」
そうだ、あの本を。あの本を探さないと。
爺さんが、潤が大事にしていたあの本だ。
あの本があるかどうか、確認しておかないと。
鮮一は祖父である潤が残したとある本を本棚から色々と物色を始めた。
精神系の本や、生き物や植物などの図鑑、昔の偉人の名言など、調べ上げれば調べ上げるほど目的の本が見つからない。
「……ん?」
ふと、足元が何か違和感を覚えた。
床を触ると、納戸の金具のところに指で触れていた。
もしかしたら、この中にあるのかもしれない。
「……よし、開けてみるか」
ギィイイ……と戸を開けると、そこには古ぼけた本がそこにあった。
鮮一はスッと本を手に取る。
「……これ、は?」
俺は窓辺から差し込む夕焼けの日を感じながら、手に持っていた物を再確認する……それは、日記だった。
おそらく潤が記し続けた最後の書記とも呼べるだろう。
ぺらぺらと捲っていくと、そこには一枚の写真が挟まっているではないか。白黒の写真で、小さい潤の隣には白いキャミソールワンピースの少女が立っていた。
「……この子……は、」
――よか、った。
うまく聞き取れなかったが、その声が脳内で響くとそこで俺の意識が覚醒した。
「? ……なんで、俺、爺さんの倉庫に?」
周囲を見て、なぜか俺は爺さんの倉庫で本を漁っていたらしい。
夢遊病か? 俺、立ったまま寝てたってことにしては本を漁りまくるなんて芸当を成し遂げた覚えなんて一つもないぞ。
額に手を当てると、痛みはもうない。
「捜索チラシ、配るか――――ん? うわっ!!」
地鳴りが響き、俺は壁に手を置いてやり過ごす。
「……地震!?」
――ガァアアアアアアアアアアアア!!
「なんの声だ!?」
鮮一は本を握ったまま、一度外に出ることにした。
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