第22話 離れていった幼馴染み
家に帰ると新しいバイトの面接日程の返事と真菜からの電話が来ていた。ひとまずシャワーだけは済ませて、真菜に折り返しの電話をした。
「もしもし。」
「おいっす。琴葉!」
ワンコールですぐに出た真菜はテンションが高いことで電話越しでもわかった。この人はいつだって明るい。
「あのさ、中学の同窓会行く?」
聞き覚えのない内容が私の耳に飛び込んだ。
「同窓会?」
「もしかして知らなかった感じ?今度同窓会があるって。11月の連休に。」
カレンダーを確かめてみると確かに2ヶ月先には祝日があって土日も含めて3連休になっている。
「ああ、この11月の頭のところ?」
「そうそう。そのあたりに同窓会するみたいで、地区ごと?小学校単位って言うのかな?で出欠確認してるみたい。」
真菜に言われてメッセージアプリを開くがそんな連絡は1つも来ていない。他のSNSのメッセージ機能でもそんな内容に関することは何1つ来ていなかった。
「えっ。そんな連絡来てないけど。」
「ええ。琴葉ってそこの小学校だったよね?」
「そうだけど。」
「私、中学から転校してきたからさ。誰に連絡していいかわからなくて。」
やんわりと話を逸らされたような気もするがそのまま話を続けた。
真菜は中学から私と同じ地元に来た転校生。だから誰からも連絡が来ないし、誰に連絡していいかわからないかはわかる。でも、私は地元に20年近く住んでいた人。小学校も中学校も高校も地元の学校。同級生のほとんどは中学も高校も一緒。もっと言えば小学校から一緒な幼馴染みなんて何十人もいる。それだけ付き合いが長いのに私に連絡をくれる人は誰一人としていなかった。みんな付き合いが長いのによくドラマや映画で描かれるような幼馴染みの関係は私にはない。
「琴葉。聞こえてる?」
「ごめん。ちょっとぼーっとしてた。」
「それで行く?琴葉は。」
「でも、そう言うのって中3のクラスごとだよね?」
「まあ、そうだろうね。」
「行ってもクラスで会っても話せそうな人いるかな。昔は話せたけど、今は無理かも。」
「まあ、そう言うのあるよね。時間が経つとってやつ。」
本当はそんな理由じゃない。小学校から高校まで一緒。もっと言えばその前の保育園や幼稚園から一緒で付き合いは長い幼馴染みんはずなのに連絡が来ていない。忘れられていることがショックで行く気にはなれなかった。
「私は行かないかな。会場まで行く手段もないし。お酒とか飲めないし。」
「電車あるけど不便だよね。あれ。全然走ってないし、行けるところ限られるし。私、どうしようかな。行ってこようかな。」
「でも、このタイミングで行かないと行く機会っていうか、もう二度と行かない気もするけどね。」
「そうなの。行ってこようかな。幹事っぽい人に言って行ってこようかな。」
「せっかくなら行ってきなよ。」
「それもそっか。って言うより聞いて。この前彼氏が、夜遅くまで飲んできて『迎えに来て』って行ってきて。私のことも考えてって感じよね。」
内容としては共感して欲しいのかもしれないが、私には単なる彼氏がいると言う自慢話にしか聞こえなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます