第20話 二度目の旅立ち
大学を卒業して半年が経った9月の頭。私は地元から二度目の旅立ちをした。
特に住む場所もつてもない。身内はみんな県内に住んでいたので頼れるところはない。もっと言えば全財産を持っても底を尽きればもうおしまいだ。
段ボール5箱を送り、1つのキャリーケースを持って東京へ行った。こんなにいい歳で家出をしたと言っても過言ではない。
荷物は父も母も妹もいないときに運び出してもらった。そして、同じ日に高くて乗らなかったローカル線を記念に乗って、その電車で主要駅まで行き、東京行きのチケットを買った。
もちろん後ろめたい気持ちもあった。心のどこかで自分はわがままな奴だと思ったし、今からでも引き返そうかとも思った。でも、その考えすらも自分が真面目すぎなのかもしれないと吹っ切って東京駅まで向かった。
降り立った東京駅。先月だって来たはずなのにそのときとは違った。直感的にここなら私の居場所を見つけられるようなそんな気がした。
スマホは父から信じられないほどの連絡がきていた。どこにいるのか、早く帰ってこいと散々だった。でも、母からは1通だけ。
“いつでも帰ってきていいからね。応援してる。”
その1通に込められた優しさ。それが私を後押しして、進み出した。
借りたのはワンルーム。実家で過ごしていた自分の部屋よりも狭かったけれど、父と母の不穏な空気がないのを考えたら私にとっては城そのものだった。
目隠しのためにカーテンだけは用意していたのでそれは取り付けた。その他の家具は何もなくて段ボールに詰められたままだ。
初めての東京でのご飯を食べる。近所のスーパーで割り引かれていたお弁当を段ボールを机代わりに食べた。
持って来た布団を敷き、スマホを開いてバイトを探した。そして、同時に仕事も探した。そして、推しを見た。初めて一人暮らしをしたときも同じライブDVDを見たなと思いつつ楽しんだ。それから、明日からこの街で頑張る活力をもらう。
こうして私の東京生活が始まった。
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