第16話 就活と推し
学生時代、もう何社も受けた。片っ端から使えるものは使った。それでもダメだった。
「こないだの会社の人。すごい親切だった。」
「えっ。あの会社の人?」
「そうそう。話し方も丁寧だったし、言葉に詰まっても大丈夫だからって言ってくれて。内定ももらえたし」
「嘘でしょ。私のときそんなんじゃなかった。」
その友達と同じ会社を受けた。私にはかなり冷たくそれが初めての面接だった。
「あのさ。なんでそう思ったのかもっと具体的に教えてもらえる?」
「はい。私がそう思った理由は今まで経験して―。」
「だから、その話はもういいから。もっと具体的に話してよ。」
「はい。私が―」
このやりとりを何度もして泣きながら帰ったことは今でも覚えている。
「何度もなんで?とかなぜ?もっと具体的にって言われた。」
「そんなのないよ。本当に同じ人?そんな圧迫面接みたいなことなかったよ。全然そんな人に見えなかったし、他の人もそんなことなかったって言ってた。なんでなんだろうね。」
そう言われたときに自分だけなんでと思った。なんで自分だけそんなこと言われなきゃいけないんだと。そういったことは度々あった。
「ぜひ、受けていただきたいので最初のエントリーのところは記載していただいて確認できましたので今からメールで送るものを提出してください。そうしましたら、面接にご案内しますね。」
わざわざ電話までかけて、メールもその日のうちに確認。質問もきちんと記載していった。内容も基本的なものばかりで特記事項の有無などでそれに答えてその日のうちに回答を送信した。その結果来たメールは
「あなたが活躍できる場を用意することができませんでした。」
ふざけるのもいい加減にしてくれと思った。電話までかけてきて、返答したらこれ。面接にすら通してもらえないこともあった。
他のところでは紹介してもらった会社で応募をしたら後日「選考が中止になりました。」と連絡がきたこともあった。
他にも面接を途中で中断されたこともあった。
「最後に質問ありますか?」
面接を担当した一人がそう言った。それをもう一人の担当者が手で止めるそぶりを見せた。しかも、私から丸見えで「ないです」とはっきり言って面接を退出した。
経歴も問題なし、性格もいいとみんなに慕われてきたのにどこにも縁が無く一人でのらりくらりと時間だけが流れた。
もう限界になったとき行ったライブ。ドーム規模のライブで当たった席はまさかのアリナ席。もう近くて迫力があった。そこに出て来た推しはめちゃくちゃ輝いていて、こんなに幸せな日はもうないかもしれないと思った。私はまんまと魔法にかかってしまったのだ。
それからもことあるごとに私の心を癒やしてくれたのは推しだった。いつ見ても輝いて綺麗だ。その笑顔と楽しそうなメンバーの雰囲気さえあれば私だって自然と癒やされていった。
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