第13話 別れと別れと偶然
スマホを開いてチェックする。
「うわ、ライブ決まってる。」
それはDREAMERSとして1年ぶりとなるアリーナツアー開催のお知らせで舞い上がる。推しに会えるという感情が早くも高まる。早速、いつもオタク友達としてライブに行っていた美希に連絡をする。美希は中学と高校の同級生で同じ部活で出会って、いつも会ってはオタク会話で盛り上がっていた。
ことは:ライブ決まったね!どこ応募する?
メッセージを送信するとすぐに返事は返ってきた。
みき:ごめん。今年は職場の人と行く
戻ってきた返事はこれでさっきまで一緒に行けるかもと舞い上がっていた自分がバカだった。
みき:たまたま同期で好きな子がいてその子と行こって話になってて
一人でとれるチケットは最大2枚まで。私はもう頭数には入れない。もう私は一緒には行けない。
ことは:そっか。全然大丈夫だよ
みき:本当にごめんね
ことは:楽しんできてね
もう誘える人はいないので仕方なく1人で応募することにした。当選発表は3週間後。もう1人で寂しいが、推しに会えることを考えると楽しみでしょうがない。
でも、頭によみがえってくるのは推しとあってしまったあの日のこと。それはアイドルとしての姿を見たわけではなく、森田涼真として会ったからかもしれない。それでも推しであることに変わりないはずなのに写真を見るとあのときとは違うような気がする。やっぱり、あれは私が疲れすぎて見た夢だったんだ。幻想だったんだ。これからライブで会う方が本物。そう思っていた。
地方なので電車代、宿泊費、チケット代、グッズ代をざっと計算。今まで溜め込んできたバイトの収入を初めて使う。そのバイト代は1回のライブに行くことでほとんど消えてしまうがそれでも自分が満たされるのであればいい出費だ。
ここから始まるのがダイエット。とにかく筋トレして少しでも綺麗な自分をとひたすらに動く。動画を調べて効果がありそうなものを開いてやってみる。
「琴葉、どかどかうるさいから辞めて。」
部屋で動いていると下にいた母がうるさいと注意しに来た。仕方なく別のトレーニングをする。
ただ、この夏の熱帯夜のなかやるトレーニングはいつも以上に体力を消耗する。せっかくシャワーで汗を流したのにも関わらず汗でベトベトだ。
画面の上の方に出て来たメッセージが気になり開いてみる。
まな:ねえ。これとこれどっちがいい?
一緒に送られてきたのは写真でメンズ向けのネックレスが2枚。時期的に考えると誕生日プレゼントだと思われる。毎年この時期にこの相談がやって来る。
1枚はシルバーで小さめの四角いプレートに名前を彫ってもらえるよう。もう1枚はシシルバーでリングがついたもの。正直、どっちでもいい。
ことは:私だったら二枚目かな
何となくでそう送っておく。私には彼氏いないし、男友達もいないからそんなもののセンスはない。
こうやって別れが来る。でも、みんなにはその分出会いが来る。私は離れていくだけ。それを感じさせた。
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