第29話 電磁界への退屈な封印の話
今日は私の結婚式です。
ほんの数ヶ月でしたが忙しく過ごしたからか、あっという間に過ぎていきました。
ゆーちゃんの結婚式、中途採用になった新人の教育、新システムのトラブル、まぁ色々とありましたが。
披露宴では友人としてスピーチした高橋君に続いてゆーちゃんや佐藤も含めた面々で生演奏してくれて、花嫁の私も参加してみたり。
新郎の小次郎さんと筋トレジムのご友人の半裸筋肉ダンスがあったり。
酔いの回った志穂ちゃんが小次郎さんを「加奈さん泥棒!」と呼んで課長に引きずられていったり。
そして披露宴の半ばを過ぎ、またひとつの疑問が私に冷や汗を流させています。
見間違い?他人のそら似?
小次郎さんの職場のかたからお祝いのスピーチを頂いています。
この方が小次郎さんが以前お世話になり、今回彼を東京に呼んだ元上司だそうで初対面なんですが。
あの顔
『石川・・いや、両家共に石川でしたね。新郎の小次郎君とは転勤先で一緒に仕事を受け持つことになったのが縁で・・・』
この声
『・・・今日はとても可愛らしい奥さんのお姿を拝見できてとても・・!』
あっちも感づいた?
『あ、ああ失礼、新婦さんに見とれてしまいました』
二度と会わない予定でしたよね?
「小次郎君、加奈さん、お互いにいい人を伴侶にしたと思います。良い家庭を作ってください」
パチパチと拍手が響き『隣のおじさん』が席に戻る。
いや、隣のおじさん改め『中野部長』さん。
ちょっとだけ自由になる時間があったのでキョロキョロ探す。席には中野さんはいない。
少し確信めいたものを感じつつ喫煙所を覗くと・・・いた。
「こんにちは、中野さん」
『うぉっ!・・主役がこんなとこ来ていいのかい?』
「ま、ほんの少しだけ。ハイライトの匂いがするかなぁと」
『ああ、相変わらずだよ。・・・まさかここで再会するとはなぁ』
「ですね。私もびっくりしてます」
『何にせよ、結婚おめでとう。小次郎君はいいヤツだから安心だよ』
「ありがとうございます」
『俺の部下ってことで心配かい?それとも俺が上司ってほう?』
「いえ、ちゃんと秘密は守りますから」
『あはは、たしかに』
「それに、私も全力で彼をちゃんと捕まえておきますから」
『そっちは心配なさそうだ。見りゃ分かるよ』
そろそろ次の催しが始まるらしい。戻らなきゃいけない。
「それでは。主人の事をこれからも宜しくお願い申し上げます」
『ご丁寧にありがとうございます。末長くお幸せに』
転勤先に危険物が埋まってるらしいけど、不発弾はそっとしておこう。
『ほら、旦那の後始末を肩代わりしてやるんだから、奥さんも誠意見せてよ』
・・・とかなんとか?
前なら妄想ネタにしてそうなんだけど、そういう気にならなくなったのよね。何でだろう?
『お前が聖剣より魅力を感じないからだ。ある意味打ち止めだな』
・・・なるほど、納得。
てか魔王様、なんでずっといるの?
『まだ次が決まらぬからな』
次?転々としてるんですか?どうやって?
『加奈が気にすることはない』
「なんで、結婚式の引き出物でEMSくれたんでしょう?」
「あの夫婦、筋トレ仲間らしいからねー。奥さんも脱いだら凄いらしいよ?」
「あー、そんなこと言ってましたね。腹筋割れてるとか」
「使ってみた?ウチはまだなんよね」
「まだ。アタシ今晩やってみよっかなー」
「それじゃあウチもやってみる。感想聞かせてなー」
『何もない空間に封印されて退屈じゃったが、加奈より楽しませてくれるヤツと会えるかのぅ。みんながどんな反応してくれるのか、今から楽しみじゃ♪』
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不定期更新で申し訳ありませんでした。
システムトラブルで課長と再接近や、実は最初からいた優しい魔王様視点など、もしかしたらボツにしたお話を番外編で増やすかもしれませんが、これにて完結となります。
最後まで読んでくださった方々に感謝致します。
本当にありがとうございました。
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独り暮らしの女性会社員が色々やる話 @seruly
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