第20話 自信が揺らいだ話

志穂ちゃんとの飲み会から一夜明けた寝起きはグダグダ。

酔いもあってソロ活動後そのまま寝落ち。ブラウスもブラもずり上げ、スカートは捲りあげたままの下半身丸出し。事後感半端ないですね。


今日も仕事なんだよね・・休みたいけどダメだよなぁ。

とりあえず朝風呂、いつものフルグラ朝食、そして身支度。


何をしてても志穂ちゃんと顔合わせた時の反応が想像できなくて恐ろしい。

避けられちゃうかな?思いっきり嫌われてたりしたらどうしよう?不安しかありません。




そして出勤すると、拍子抜けするくらい志穂ちゃんが明るい。

「加奈さん!おはようございます!」

「おぅ、志穂ちゃん、おはよー」

「昨日は色々ありがとうございました」

「えと、その、まあ、うん」

何だか普通?いや、いつもより元気?


「何かあったらまたアドバイスお願いしますね」

「彼氏のいない私がアドバイスとか、普通無しでしょ」

相手がいての話だし私なんか、そもそもアドバイス貰わなきゃいけない立場です。


「いえ、ホントに彼氏とうまくいかなかったら、手取り足取り教えて欲しいです」

「手取り足取りって・・」

「加奈さん、私が戸惑ってるのを楽しんでましたよね」

「いやその、酔っぱらってたから、ごめん」

「気持ちが高ぶった所を置き去りにされて、すごく切なくなりました」

「志穂ちゃん?」

「機会があったら、押しちゃうかも」

「押すって」

「加奈さんのスイッチ。私の知らない女の子同士の世界への扉開けたくなりましたよ」

「それって・・」

百合の世界?


「その、加奈さんの気持ちは嬉しいですが、今は彼氏がいるのでこたえられないんです」

「あ?そ、そうだね、あはは」

私、今フラれたらしいですよ?


「ごめんなさい、嫌いとかじゃないんです」

「いやいや、もういい。もう充分だから」

「加奈さんには、その・・性欲しか感じないというか」

「・・ん?」

「彼氏と一緒にいたいし、色々したいと思うんですが」

「うん」

「エッチは加奈さんのほうが気持ち良いと思ってしまって・・サキュバス的な魅力というか」

「何言ってんの・・彼氏とうまく行けば、そんなこと思う暇もないから、きっと大丈夫だよ」

「そうですか?加奈さんとなら・・」

「とにかく彼氏と頑張って。報告はちゃんと聞くからさ」


もう、とにかく話を一段落させたかったのでこの辺で逃走することにしました。



私は志穂ちゃんにほろ酔いで、手を握り、キスを迫った。

すると、酔った勢いで気持ちを押さえられなくなり、禁断の恋心を打ち明けた、と変換されたのかな?

真剣な同性愛者からは怒られそうだけど、もう志穂ちゃんにはそう思われててもいいや。しかしサキュバスって・・疲れました。




「石川加奈、ちょっといいか?」

「はい、なんでしょう」

こっちも課長に聞きたい事がある。まとめて一段落させてしまいたい。お茶でもいかがとジェスチャーで給湯室に誘う。


「志穂の方に相談出来たのかって聞いたら『相談が吹き飛ぶくらいエロかった』と言われたぞ?何したんだ?」

「何をということなら、手を繋ぎました、かな?」

「・・それだけ?」

「端的に言えばそれだけですね」

「悩みが吹き飛ぶ繋ぎかたがあるのか?」

「忘れるんじゃなくて、考えられなくなっただけだとおもいますけどね」

「どういう事かさっぱりわからんな」

どれどれ。


「・・んじゃ試しますか」

「え?」

「両手をこんな感じにして貰えます?」

「こ、こうか?」

「志穂ちゃんは机の上でしたけど、そんな感じです」

そっと課長の手の甲に自分の両手を添える。


「?!」

「もうちょいそのままでいてくださいね」

手の甲側から手首をそっと掴む。

そこから指先を滑らせ、手の甲を擦る。

親指以外の指を、相手の指の付け根から爪まで滑らせる。

今度は爪のほうから指と指の間を自分の爪でくすぐるように戻る。

指先で優しく撫でながら手の甲から手のひらに回し、ワンコにお手するような位置に移す。

相手の指と自分の指を曲げて、手が逆の指相撲みたいにしてニギニギする。

そこから形を崩しながら指を絡め、恋人繋ぎにする。


「課長、こんな感じですけど、どうですか?」

「あ、いや・・」

「それで、顔を近付けて」

繋いだ手で少し課長を引き寄せる


「私のエロいスイッチ、いれてみますか?」

「お、おい、おま・・」

「スイッチは・・キスですよ?」

「!!」

さすがに課長も顔が赤い。思いのほか効果があったみたい。



「はい、こんな感じです。吹き飛びそうですか?」

「えっ・・あ、ああ、なるほど」

「志穂ちゃんとしたのはここまでです」

「そ、そうか」



「・・それで、課長は?」

再び手に力を込める。

「は?」

「もう一度、私のスイッチ押したいですか?」

ストレートに聞いてみた。






「俺は、オトナな女らしいのが好きなんだよ」

うにゃ?


「ぶっちゃけ巨乳派だ」

ゲフッ!


「お前って、良く言っても合法ロリだし」

それ、良くわれてるの?


「俺のストライクゾーンから、全然外れてるんだよ」

ここまで言われるとは。


「すまんがお前を恋人にしたいとか、そんな風には思わないんだ」

1日に二度、フラれたらしいですよ?









「それなのに、お前だと勃つんだ」

は?


「正直キスしてしまいたい。今ここが職場でなければ押し倒してる」

「ちょっ・・」

掴んでたはずの両手を、逆に掴まれて逃げ場が無い。


「雨の日も今回も、誘ったのはお前だぞ」

「か、課長」


「見合いするんだろ?」

「えっ?」

「お前も、俺と一緒になりたいとか思ってないから見合いするんだろ?」

確かにそう思ってた。


「それは・・そうですね」

「お互い、身体だけ欲しがる相手ってダメだろ・・」

「そう、ですね」



「なんだっけ、淫魔?エロ特化のヤツ」

「はぇ?」

変な声が出た。

「そういうヤツの素養あるんじゃないか?」

「せめてヒトでお願いします!」

「週末、見合い相手も魅了できたら教えてくれ。そのつもりで接するから」





職場での立ち位置が人外になりましたよ?

もうレズどころか人族やめる?


お見合いで私の評価が淫魔になったら?


ニンゲン続けられるよね?







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