第19話 酔っぱらいの思考力な話
仕事が終わり、約束通り志穂ちゃんと一緒に晩御飯へと向かいます。行き先は会社から割と近い居酒屋です。
串焼き盛り合わせ、卵焼き、サラダなんかを頼んで乾杯。志穂ちゃんはビール、私は梅酒とウーロン茶。
私はお酒弱いのでちびちび飲みます。
まず話題になったのは指を触ったときの事。
「加奈さんに手を触られたじゃないですか」
「お昼ごはんのときね。ごめんね、なんか悪いことしちゃったかな」
「逆です。気持ち良くてビックリしました」
「は?」
「指先に触れるだけでこんなになるんだって、そしたら物凄く恥ずかしくなっちゃって」
「あ、えと、そんなに?」
「はい、あの時じわっと濡れちゃって、トイレに駆け込みました」
ゲフッ
「志穂ちゃんごめん、そんなつもりじゃなくて・・」
「いえ、いい勉強になりました」
「勉強?」
「加奈さんの触りかた、感じさせようとして、ちゃんと感じさせたんです」
「いやいや、そこまでは」
なんなんだ、この羞恥プレイ。
「その、彼氏とエッチする時、触って欲しいと思っても触ってくれないとか、あるじゃないですか」
「ああ。あるね」
「それで、触られてる時も、そうじゃない触りかたして欲しい事もありますよね」
「だね。わかるわかる」
ソロ活動とペア活動の根本的な違いであり、永遠に埋まらない溝だろうな。
「でも、想定を越えることができれば良いんだって思うんです」
「想定を越える?」
「そうです。お昼の加奈さんの触りかたは、まさにそれでした」
「にゃ?」
「何とも思わず、期待もしてなかったのに気持ちいいなんて、嬉しい驚きでした」
指先触っただけで、私の評価がおかしな方向にハネたらしい。
「あ、あははは・・」
「どうしたら相手を気持ち良くさせる触りかたできるようになるんですか?」
知らんがな、とは言えないよね。
「んー、私だって誰かの気持ちよさを感じ取ることは出来ないよ」
「そりゃぁ誰も出来ないですよね」
「だから、自分が気持ちいいと思う事をしてあげて、相手に確かめるしかないの」
「えっと、気持ちいいか聞くんですか?」
「そう。恥ずかしいけど簡単」
「言うのは簡単ですけど、教えてくれるんですか?」
「もう少しハードル上げると、自分がどうされるのが気持ちいいか、相手に伝えるの」
「声出しちゃうとか?」
「ううん。ちゃんと伝えるの。例えば乳首をクニクニされたら私は気持ちいいって」
「うわー、恥ずかしいですよ、それ」
「一緒に気持ち良くなりたい相手と真っ裸で抱き合ってるんだよね?それ以上に恥ずかしいのはそうそうないよ?」
「そうだけど・・言えるかな」
「相手が気持ちいいか教えて欲しいのに、自分が隠してちゃダメじゃない?」
「あたしにはハードモードですよ」
「どうしたい、どうされたいって言い合える相手となら、きっと気持ちいいエッチしかできなくなるよ」
我ながらよくまあこんな事を言えたもんだと感心するなぁ。8割はソロ活動での経験談な気がします。
「加奈さん、やっぱエロいんですね」
「んー、もうエロい人でいいや」
「課長の言ってたエロいスイッチって何なんですか?」
「知らんわい!課長も妙な事吹き込んでどうしたいんだか」
「・・加奈さんのスイッチ、押したくなったとか?」
「げ、課長が私のスイッチ押すの?」
「うん。・・最近、課長は何か違いませんか?」
「え?!何も変わらなくない?」
「そうですか?気のせいかな」
おいおい、また妙な話になってるような。
「例えばどんなの?」
「えーと・・そうだ。加奈さんの席に座ってたの見たことありますよ」
「はぁ?!」
「当然、加奈さんが居ないから座ってたんだけど。加奈さんの前だと違うのかな?」
「にゅぅ・・・」
訳がわからん。何やってんるんです課長。
「加奈さん、酔ってます?」
「少しのお酒で酔える、安上がりな体質でございます」
「そろそろ帰りますか?」
「志穂ちゃんが一段落したならいいよ。こんな先輩でごめんね」
「いえ、今日はありがとうございます」
「色々言ったけど、実践は自己責任でね」
「んー、頑張ってみます」
タクシーで志穂ちゃんのアパートに到着。
ちょっと寄っていきませんかといわれてお邪魔することに。
缶チューハイをはんぶんこして乾杯。
彼氏の惚気話やら愚痴やらを聞く。
「加奈さん、昼休みの、もう一回してくれませんか?」
「指触ればいいの?」
「です」
そっとローテーブルに置かれた手に触れる。
「志穂ちゃん、期待してたら大したことないとおもうよ?」
「ううん、同じで充分なんで」
そういわれると、期待を越えたくなります。
机に乗せられた志穂ちゃんの左手。
私は左手を伸ばし、志穂ちゃんの右手を捕まえ、そっと両手を並べる。
志穂ちゃんの驚いた顔がみれて楽しくなる。
志穂ちゃんの両手に自分の両手を添え、昼休みみたいに手の甲を撫で始める。
お酒のせいか、ふにゃっとした表情ををしてて可愛い。
手の甲から指先へ、そして指の間へ。
これだけでピクピクしてる。この反応も可愛い。
もう一度指先へ、そして今度は指を絡ませ、いわゆる恋人繋ぎにする。
驚きと戸惑いと、興奮と期待が入り交じったような志穂ちゃんが可愛くて仕方ない。
「志穂ちゃん、私のスイッチ、押しちゃう?」
「えっと・・どこなんですか」
「スイッチは・・キスだよ?」
そっと顔を近づける。
少し荒い息がお互いかかる。
鼻が当たる距離で待つ。
志穂ちゃんが震えてる。
「悪ふざけしすぎた。ごめんね」
「・・・え」
「あとは彼氏と試してね」
「あ・・・」
「それじゃ帰るね。タクシー呼ぶから、もうちょいだけ居させて」
タクシーに電話する。すぐ来るらしい。
「ホントにごめんねー。酔ってたからってやりすぎだよね」
「いえ・・そんなことは・・」
「やっぱり、私ってエロい?」
「はい」
「即答された」
「だって・・・」
「ま、今度彼氏とどうだったか聞かせてくれたらいいや。よろしくね」
「あ・・はい・・」
パッパッ 短めのクラクションの音が聞こえる。タクシー来たらしい。
「じゃあまた明日、お休み~」
「・・おやすみなさい」
志穂ちゃんの部屋を出て扉を閉める。
急いでタクシーに乗り込む。
「はぁぁぁぁ・・・」
「お客さん、お疲れみたいですね」
「同僚と飲み会してたんだけど、元々お酒強くないんで」
「あー、付き合いってありますからねぇ」
嘘だ。そんなので疲れてなんかいない。
無性にシタい
無事に帰宅。部屋に入ってベッドに倒れ混む。
スカートを捲りあげ、下着を脱ぎ捨て、電マ君の電源を入れてクリに押し付ける。振動から生まれる快感が余計な思考を奪う。
もしキスされたらどうなってた?
タクシー来るのが遅かったら?
私は志穂ちゃんと何やろうとした?
課長は私の見てない所では何してるの?
そういや週末はお見合いするんだっけ?
色んな事柄と酔いが頭をぐるぐる回る。何も考えがまとまらないまま、高まる快感に溺れて逃げる。
私、何やってんだ?
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