第6話 お寺で妄想してた話


私とおじさんは車でお出かけ。行き先は割と近所の全国的に有名な観光スポットです。


転勤してきた時に、近くなのでいつでも行けると思っていたそうですが、結局行けていないお寺を巡る事になりました。おじさんは小学校の修学旅行で来たことがあったそうです。



『んー。一度は見てるはずなんだけど、全然印象が違う。別物というか。』


「小学校の頃を思い出したりしないんですか?」

あんまり印象には残ってないのか、懐かしそうな雰囲気はありません。



『たぶんチビだった時の視点と、今の視点の高さが違うからかな。もっと広かったり大きかったと思ってた』


「視点の高さかぁ・・・」


『身長、あんまり変わってない?』


「小学校の時には身長大きいほうだったのに、高校ではちびっこ扱いでしたね」


『女の子のほうが身長大きくなるの早かったりするけど、成長止まったのか』


「伸びたましたよ。小学校のままなんてことはないですから」

思い出話でも聞き出してみようと思っていたのに脱線してしまいます。




『修学旅行の引率とかで、ちょっと大きい子連れてるとこんな感じか』


「ちびっこ連れて、学校の先生気分ですか?」


『さすがに小学生ってほど小さいイメージは無いけどね』


「ふむふむ、教え子を連れ歩きたい願望があったとか」


『いやいや、ふっと思っただけだよ』

まぁ普通にデートだったとしても、歳の差もあるし現実的ではないのかも。




「ちょっと待って・・・教え子だったらどうしましょう?」


『なんだそりゃ』


「小学校の頃の担任教師と教え子が、オトナになってから一緒に修学旅行コースを歩いてる設定です」


『妄想鍛えてる・・だっけか?』


「そんな人がいたら、男性としてどう思うとか、どうするだろうとか、想像膨らみませんか?」


『不真面目な事をマジメに考えてるんだなぁ』


「考えてるだけなら誰にも迷惑かけないですし、ノッテくださいよ」

なんとなく楽しい感じにならないか、妄想へのお誘いをしてみました。




『えーと、俺が先生で、昔の教え子の君と一緒に居るって事か』


「ですです。お題は、かつての教師と教え子が、どんな理由で再会し、どんな心境で一緒に修学旅行の思い出を辿るか、です」


『なんか本格的だな。出会ったのは偶然か?それとも・・10年後に再会の約束でもしてたとか?』


「おぉ。10年越しの再会ってシチュエーションはそそられますね。」


『10年後、この約束を忘れていなければ逢おう、とか?』


「あ、タイムカプセルだっけ?宝物を入れた箱を校庭に埋めて、10年後に掘り出すとか。そーゆーのでも再会のチャンスになりますよね」


『あー、そういうのやりたかった』


「夢がありますよね。私もやってみたかったな」

適当に脱線しつつ、思いつくことをとりとめもなく話します。



『でもなぁ、約束も何もなかったら、10年振りに偶然見かけたとしても、お互い気付かないんじゃね?』


「偶然鉢合わせて、何かの弾み・・しぐさや口癖で、ハッと気付いたり?」


『ピンとこないな・・・たとえば?』


「コホン。 出来るか、出来ないかの選択をしている間は迷い続ける。やるか、やらないか。こちらで迷うべきだ。」


『なんか聞いたことあるような気がするな』


「例えですからね。この言葉を聞くと10年前の先生を思い出すような名セリフがあればいいんじゃないかと」


『たしかにそうだけど、事前の約束に比べると難易度高いな』


「じゃあ前のルートでいきましょうか。どんな約束で10年越しの再会をします?」


『そこはやっぱり教師と教え子の叶わぬ恋心だろ』


「教師側からの好意だと完全にロリコンですよね・・」


『じゃあ逆か?先生に憧れてた子がやっと会え感じ?』


「んー・・大きくなったら先生のお嫁さんになってあげる!とか? 可愛らしい思い出話なら思いつくけど、約束までするかな?」


『なら偶然の再会に、その思い出をプラスしたらどうだ』


「プラス?」


『何かで偶然再会して、小学校の頃に好きだった先生だと気付く、とか』


「おぉ。・・・出会いアプリで彼氏探した相手が、元教師とは知らず再会した」


『アプリかよ』


「エッチしちゃった後に、かつて淡い恋心を抱いた相手だったと気付く教え子」


『どーしてもエロ方面いくのか』


「男女なんだからそっち方面はありです」


『わかった。でも教師は忘れてるんだろ?』


「昔のことを忘れている教師が、自分を思い出すきっかけになればと修学旅行の地でのデートを提案した」


『お・・それでお寺デートか?』


「ですかね。だいぶ教え子側が熱をあげてる感じになりましたが」


『すげーどうでもいい話だったのに繋がった気がする』


「ふっふっふっ」


『何で偉そうなんだか』

やっと最初に言い出した謎の二人の行動理由に辿り着けた気がして、ちょっと満足。




「それで、教師の立ち位置としてはどうですか?」


『ん?どうとは?』


「年の離れた女の子が、グイグイくると思っていて、有名とはいえお寺でデート。男性としてはどう思います?」


『それを踏まえて今の心境を語れってことか』


「そうです。」


『まぁ気がかりな点はあるけど、悪い気はしないな』


「ほほぅ。何故年の離れた教え子からデートに誘うのか気になるとか?」





『いや、こんなエロくて可愛い子と一緒に居られて嬉しい、だな。妄想の教師じゃなく、今の俺の心境』


「えっと・・、そういう不意打ちはちょっと・・」

素で照れてしまった。


『そっちからガンガン来る割に、打たれ弱いなぁ』

突然褒められたりする事に、慣れる事なんてないんじゃないかと思います。





『割と普通に楽しくお出かけしちゃってるけど・・この後、ホントにいいの?』


「私との事に慣れてきたら、予定変更したくなりましたか?」


『できれば予定を繰り上げたいかなって』


「にゅ・・」


『お寺の中じゃ、こっそりキスするのも難しそうだし』


「さすがにバチが当たりそうですね」


『ま、すでにバチが当たってもおかしくない事しちゃってるけど』


「まぁ・・ですよね・・」


『毒を食らわば皿まで、だっけ?味見したら美味しかったし』


「味見っ・・///」


『まだちょっと早い時間だけど、もう行こうか』


「・・はい」


こうしてお寺でのデートは終了。その気でお寺を一周してたら、バチ当たりな事ができそうな場所に辿り着いた可能性もあったんじゃないかなと後から思いました。



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