第3話 声が聞こえてるのか気にしてる時のお話。


お隣のおじさんに、ソロ活動している時の声を聞かれてたかも知れないと思い始めてから数日経ちますが、おじさんとの遭遇率が上昇している気がするんです。



週に数回あるゴミ出しの時に、ごみ袋を持って出ると、毎回お隣のおじさんと顔を合わせます。


おはようございますって挨拶してすれ違うだけなので、それだけなんですが。


北海道のお土産をもらった日曜から、便利?な可燃ゴミの火曜日も、面倒?な資源ゴミの水曜日も、そして今朝の可燃ゴミ金曜日も遭遇しました。



ゴミ出しルートはアパート2階の部屋を出て、廊下を階段に向かって歩きます。配置の関係上おじさんの部屋の前を通過することで階段に行けます。


階段を降り、アパート横の駐車場を突っ切った所にあるごみ収集場所までは数十歩の距離。ごみ袋を置いたら戻ってきます。


所要時間は二分程度。割と短時間なのにおじさんもごみ袋を持って出てくるから廊下や階段で顔をあわせる事になります。



仕事を終えて帰宅後、なんとなく部屋の奥にある窓を開け、物干しスペースの狭いベランダから下の駐車場を眺めれば、ごみ収集場所も視界に入ります。


仮に、私がゴミ出しで外に出る時の扉が閉まる音が聞こえたとして、窓から私がゴミ出ししてるのを確認してから、おじさんもごみ袋を抱えて部屋を出れば、必ず顔合わせる事はできるよね。自意識過剰?


三回連続で遭遇したとしても、このくらいは普通なのかな?



そんな事を思っていたら、お隣の窓もカラカラと開いておじさんが登場。


『あ・・こんばんは』


「あ、ども。」


『ベランダでお見掛けしたのは初めてですね。ちょっとびっくりしました』


「はは・・私もです」


『・・それじゃ、失礼します』


「はい、それじゃ」


カラカラカラ、パタン。



あー、びっくりした。


別に窓を開けて顔を出すという事に意味なんてなくていいですよね。私も洗濯物とか関係なく顔出してたんだし。


だけどおじさんとの遭遇頻度が上昇し、そのおじさんの事を考えていた所に突然現れたから一瞬頭が真っ白になりました。




私のことは置いといて、おじさんは何で窓を開けて顔だしたんだろう?



部屋からベランダに出て、隣の窓を見れば、明かりがついているかはすぐ分かる・・・とかいう理由だったりして?そうだとしたら、私が部屋にいるのか知りたかった?



なんか妄想スイッチが入ってしまった気がします。




隣の部屋から喘ぎ声が聞こえてきたらどうしますか?


聞こえてるのが邪魔だという意思表示に、壁を叩いて黙らせるのは聞いたことあるけど、少なくともそういうのはされなかったんですよね。



んじゃ、そういう隣人が邪魔じゃないとしたら?


居ても居なくても構わない。無関心?


・・・無関心なら不在でも気にしないんじゃないかな?



逆に、居たほうが良いと思う可能性もある?


・・・また喘ぎ声を聴きたい?



何故、壁越しの喘ぎ声を聴きたい?


・・・そういう声を聞くのが好きだから?



何故、聞くのが好きなのか?


・・・それで性的興奮が得られ、いわゆるオカズになるから?



私なら気になって壁の向こうを想像するだろうな。


声が抑えられない程気持ちいいってどんな風にしてるか気になるだろうな。


いろんな妄想して、興奮して、昂った自分を慰めるかな。


・・・私、変態ですね。単にソロ活動の燃料になれば雑食でどんなジャンルでもOKなのかもしれません。




つまり、先ほどおじさんがベランダから顔を出した理由とは?



私の部屋から喘ぎ声が聞こえてくるのを期待しているおじさんが、今部屋に居るのか気になって様子を伺ってみようとした。



犯人の動機はこれか・・・って何の犯行もないけど。正解率なんか知らないけど、一応筋の通った妄想ができてちょっと満足。




その期待を裏切って、この先声が聞こえなくなったら?


沈静化するなら構わないけど、抑えが効かなくなってエスカレートしたら非常にマズイのでは?ある日突然、隣人に襲われるとか考えると身の危険を感じて怖い。



ただの妄想で辛い方向に考えるのはやめよう。気分がどんよりするだけだし。




視点を変えて妄想を膨らませてみましょう。おじさんに私の痴態を妄想されているとして、それを知っている私はどうしたい?


声が聞かれないように静かにしておく?


それとも・・・聴かせてあげる?



・・・私、やっぱり変態ですね。


こんな発想をする時点で多分アウトなのに、どうやって聴かせるかを考えたくなりました。ついでに、受動的な「聞こえる」と能動的な「聴く」だと威力が変わる気がします。迷走してますね。




ベランダでの遭遇後、夕食を済ませ、お風呂に入ってさっぱりしたのが夜の10時ちょっと前くらい。ベッドの上に座り、壁にもたれ掛かりながらスマホでゲームをしていると



コンッ



自分がもたれている壁の向こう、おじさんの部屋のほうから何か音がしました。


多分、先週までなら全く気にしなかったはずの小さな物音。それを色々と妄想しちゃったせいでスルーできなくなっていました。





この壁の向こうに、いるのかな。




スマホを置き、もそもそと壁に向き直る。



そっと壁に耳を当てる。



特に何も聞こえない。



テレビの音もしない。



先ほど居たはずだから隣の部屋に居ると思うのに。



あまりにも静か過ぎるような。



バクバクバク・・・心拍数が跳ね上がる。



もしかして、おじさんもこちらの物音を聞き逃さないよう、静かな部屋の中で、息を殺し聞き耳を立てているのではないですか?



何といえば妥当なのかわからないけど、悪い事をして怒られてる時のような、身動きできなくなるような、異様な緊張感に心を掴まれました。





そっと壁に手を添え、そのまま壁紙を撫でてみる。


音量としては小さく、物がぶつかった時の振動もなく、それでも壁にくっついて聴いていれば分かるのではないかと思えるような音。


数秒の間、何か反応があるかと静かに待ってみたけど何の反応もありませんでした。





私は何を緊張していたのだろう。どんな反応を期待していたのだろう。


「ふぅ・・・」



私は小さく息を吐いてから、そのままそっとおでこを壁に当てながら、少し体制を変えて膝立ちの状態になりました。


そのまま、そっと目を閉じ、両手で乳房に触れ、ゆっくりと快感を求め始めました。



壁の向こうにはおじさんがいるかもしれない。でも、普通は隣の物音に聞き耳をたてたりしない。


私が少し声を出したとしても、普通は誰にも聞かれないけど、壁の向こうではそれを期待して待っているかもしれない。


これは私の単なる妄想。



私が自分の部屋でソロ活動をして気持ちよくなるだけだよ。元々わざと声を聞かせるつもりは無かったし、窓を開けたりしているわけでもない。


偶然、隣のおじさんに聞こえたとしても・・・私だけが悪いわけじゃない。聴こうとしなければ聴こえないはずなんだから。




意味もなく自分の行動に理由を作る。ただ壁の向こうから物音がしただけなのに、こんなにシタくなるなんて思ってもみなかった。



胸を揉みながら、徐々に乳首へと刺激を集めていくと、少しづつ呼吸が荒くなる。これはいつもの事なんだけど・・・今日はわざと自分で息を荒くする。



「スー・・、はぁぁ・・・、スー・・、はぁぁぁぁ」


もしこの壁が薄い障子紙だったなら、どんな息遣いをしているのかわかってしまうと思う。指の動きを大胆にしながら乳首へと刺激を集めていきます。



「はぁっ・・はぁっ・・はぁっ」


高熱で苦しんでいるかのように息を荒くする。壁が段ボールくらいの厚さなら、向こうに聞こえてると思う。



いつもは時間を掛けてじわじわと感じていくのが好きなのに、なんだか気持ちに余裕がなくて。無理矢理刺激されているような感覚が欲しくて。


電マ君を手に取り、電源をいれ、下着の上から敏感な所へと押し当てる。



「はっ・・・んっ!(コンッ)・・あっ」


身体がビクッと反応しちゃったせいで、おでこで壁に軽く頭突きをしてしまいました。



やっちゃったかな?慌てて電源オフ。




おでこの先、壁の向こうの気配を探るように意識を集中してみる。



何の音もしない。



少し待っても・・・やっぱり壁の向こうからは何も感じな




(?!)





・・・何だ



・・・今のって



・・・さっき壁を撫でた時の



まじ?



マジ?!



どうしよう?



居るのかな?



居るよね?!







・・・ホントに待ってる?




持っていた電マ君の電源を再び入れる。


ヴーン・・・静かな部屋に、やけに大きな作動音が響いてる気がしてしまう。


今更だけど、声がどうこう以前にこのヴーンって音の時点で聞こえてたんじゃないかと思えてくる。




再びクリに押し当てる。


「はっ・・んっ・・んっ」


ヴーンという作動音のトーンが、押し当てたせいで少し低く変わる。聞こえていれば、この変化だけで何をしてるか分かっちゃうかも知れない。



「んーっ・・・んーっ!」


この声はわざとだ。いつもなら我慢できるのを敢えて止めない。



「あっ(コンッ)あっ・・・んっ」


弱点を手加減無しで責めると、さすがに演技じゃない声も漏れる。軽く壁に頭突きしてしまう程度に身体をビクつかせ、私はあっというまに限界に近付いていく。どうせなら、もうイキそうなのだと伝わって欲しいとおもった。



「もうっいくっ!だめっ(コンッ)いっちゃう!!」


わざと絶叫したりはしないけど、声を抑えずに絶頂を迎えた。






感想。イッたけど、なんか浅い絶頂だった。


気持ちが準備中で体だけが先に達してしまったような。絶頂できた達成感よりも、絶頂してしまった罪悪感がある気がしました。心と体のバランスが取れてないと満足度に差が出てしまうのかもしれません。




電マ君の電源を切り、再び静かになった部屋。静寂が辛い。


勝手に妄想して盛り上がったくせに、思ってたのとは違う結末にどんどん意気消沈していく。



「・・・私、何やってんだろ」


現実的には誰も聞き耳を立てていないであろう壁に向かって呟く。



「・・もう寝ます。おやすみなさい」


ベッドに横たわり、もそもそと頭まで布団に潜り込んで目を閉じる。


恥ずかしさ、切なさ、罪悪感、不完全燃焼、悪感情が心を埋め尽くし、頭の中を色んな事がぐるぐると回る。



何がダメだったんだろう。


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