第10項

朝、鳥たちの声が聞こえる。

どうやら、いつの間にか眠ってしまっていたようだった。


熱いシャワーを浴び、目を覚ます。


いつものようにコーヒーを淹れる。いつものように髪を束ねる。

普段と変わらない朝の一連の動作。


ただひとつだけ、いつもとは違う決意があった。


「見ることを諦めない」


思えば何気なく、思考を止めて生きていた。

波風は立てない方がいい。心は荒げない方がいい。

そうやって、自分の心から、素晴らしい色づいた世界から逃げてきた。


色は失われたのではなく、自分から遠ざけていた。

いまの自分は昔の自分が作ってきた結果でしかない。


本当に変わりたいと心の底から願った。


モノクロームな現代。

見ようとしなければ、見えないものがある。


その目で見る世界は今までよりも、鮮明に色づいていた。

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モノクローム現代 吉山田よしお @tokyo930226

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