第8話 部長と課長

 私の職場、国内営業部は、営業本部の中のひとつにしか過ぎない。

 幾つもの部の中の、ひとつ。


 直属の上司である、馬渕部長と、藤村課長。

 この二人、あまり仲が良くなかった。


 部長は元々、技術部にいたらしい。

 課長は、営業畑できた、生え抜きの人。


 多分……だけど、“技術上がりに営業の何が解る!”みたいな、しかも部長の椅子に座っているということで、ヤッカミ半分なんじゃないか~という声が多かった。


 馬渕部長、優しくてすごく人当り良かったのにな。

 藤村課長、仕事は出来るっぽいけど、人望は無かった。

 しかも、爬虫類みたいな感じで、怖かった。


 部長には、人生で初めての “牛しゃぶしゃぶ” をご馳走になったことがある。当然二人きりなどではなくて、同期の子と一緒だったけれど。


 誕生日には、とても綺麗なハンカチを頂いた。

 部下に声を掛けてくれて、励ましてくれるような穏やかな人だったけど、会社では、それだけではダメなんだね。


 最終的に残り、出世をしたのは、藤村課長だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る