第2話 辞令

 運命の日がやってきた。

 辞令が言い渡される日……。


 社会人として、ようやくスタートラインに立った瞬間。

 緊張しすぎて、心臓はバクバクと音を立てて、こめかみまで登ってきた。


 研修中にあった、部署紹介の後、配属を希望する部署のアンケートが取られていた。

 確か、第三希望まであったような。


 私は、当たり障りのない “総務部” を希望していた。

 商業科卒だけど、経理には全くの自信がなかったし。


 あとは、営業部だけはどうしても避けたかった。


 それ以外なら、もう何処の部署でも良いというのが、私の正直な気持ち。


 ……けれど、辞令は、残酷だった。



 < 営業部 国内営業課 勤務を命ずる >



 辞令を読み上げられ、手渡された時。目の前が真っ暗になったのは、言うまでもない。

 サーッと、全身の血の気が引くような……そんな感じ。


 男女合わせて14人いた新入社員のうち、営業に配属になったのは、女性だけ3人。


 国内営業部に、私と広野さん。

 海外営業部に、松井ちゃん。


 広野さんは、外回りの営業に、私と松井ちゃんは、営業事務(営業アシスタント)として配属された。


 すっかり仲良くなっていた淳ちゃんは、なんと技術部。

 若い男性ばかりの部署……羨まし過ぎる。


 辞令を貰った瞬間は、あまりの衝撃に目が眩んだ。

 呼吸の仕方を忘れるほどの、強いダメージを受けた。


 ありえない配属先に、「人事の人は何を考えて、何を見ていたんだろう!?」と、八つ当たりの如く、怒りさえ覚えた私。


 でも、今となっては、あれも人間育成みたいなもので、私の中の “何か” を見抜いたのかもしれない。……とも思う。


 改めて、14人の配属先を思い起こしても、頷けるものがあったから。


 辞令の後、各部署の先輩方が迎えに来て、私たち新人は、新たな世界に飛び込むことになった。

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