青と水色のチョコレート

@Loki036

第1話青と水色のチョコレート

 その子と遊ぶのは今回が初めてだった。


 高校では2年生、3年生と同じクラスだったけど、喋ったのはたしか学祭とか、体育祭とか、いわゆる“みんなで頑張ろう系”のイベントの時だけ。


明るくて、みんなから人気。男同士群れて騒ぐことしかしてなかった俺には無縁の女の子。


 大学生になって、交友関係も広がって、暑くなって来た七月。みんなが不思議と「同級生に久しぶりに会いたいな」ってなる時期。


たぶん、彼女が俺に連絡して来たのはそんな不思議な雰囲気に乗せられてしまったからだ。


決して高校の時好きだったからとか、俺の顔がいいとか、そんな甘酸っぱい理由じゃないと思う。だってほとんど話したことなかったし。


『〇〇市に住んでるんでしょ?

 大学祭でダンスやるから見に来てよ』


だからこんなメッセージが届いた時はとても驚いた。何で俺なんかにって思う反面、やっぱり嬉しかった。女の子から連絡が来て嫌な気持ちになる男なんて存在しないのだ。


だから俺はホイホイ見に行った。


緊張しながらダンス会場に行って、明るい髪色の人々の頭の間から、覗き見るようにして、踊っている彼女を見た。


多分目が合って、笑ってくれた。勘違いかも。


ダンスが終わって、2人でちょっとだけ大学祭回ってその日は解散した。多分その日の俺はいつになく上機嫌だったと思う。


それからもたまに連絡取ったりなんかして、2人で飲みに行ったりもした。


 だから、その日もいつもみたいにふたりで飲んで、それで解散その予定だった。


 でもその日はなぜか2人とも酔い過ぎてしまった。悪酔いってほどじゃないけれど、彼女の乗って帰るバスの最終時刻を忘れて飲んでしまうには十分なアルコールの量だったんだと思う。


そしてそのアルコールは僕にちょっとだけ勇気をくれた。蛮勇だったかもしれない。


「もうバスないし、タクシーも高いからさ、

 うちで二次会でもやっちゃう?」


「タクシーも高いから」なんてダサい言い方しかできない自分が情けなかった。断られる予感がしていた。


だから彼女が


「いいよ、楽しそう。何買ってこうか」


って言ってくれたときすごく嬉しかった。

彼女の返答はスマートで、手慣れていて、少し悔しくもなった。


駅に行って、俺がいつも乗って帰る電車に2人で乗って、2人で俺の家の最寄りで降りる。むず痒かった。柄にもなく車道側を歩いたりもした。


コンビニに寄って、お酒とスナック、あとチョコレート菓子を買った。お酒は甘いものと飲んだ方が美味しいと言うのが俺の自論だ。


家に着いたら手を洗って、あと、服を貸した。


「のぞくなよ?」


なんていじわるく笑って、彼女は俺が普段着ているスウェットの上下に着替えた。


そのあとは2人で映画を見ることにした。

お菓子を食べながらみようって言って、彼女はチョコレートのお菓子を開けた。青と水色のパッケージでそれぞれ味が違うお菓子だ。


「どっちの方が好き?私はね、水色」


似合うな。なんてちょっとズレた感想が浮かんだ。


「俺は青い方が好きかな」


「なんか似合うね」


心臓がはねたってこう言う時に使う表現なんだなって、今にして思う。


「これ一袋買ったら2人とも食べたい色違うから喧嘩にならないね」


なんて可愛いことを言った彼女は、酔っていたのもあって、映画を見始めてすぐに寝てしまった。


キスぐらいしてやろうかって思ったけど、男としてのプライドが、寝てる女の子にそれは良くないなって止めてくれた。


次の朝おきて、と言っても昼くらいだったけれど、彼女は「授業におくれちゃう」なんて慌てて帰る支度をした。


荷物をまとめる彼女を横目に、机の上のお酒とか、お菓子とかを整理していたら


「このチョコ、水色のやつは食べないで取っておいてね、次来た時食べるから」


と彼女が言った。敵わないなって思った。


今もたまに2人で飲みにいく。

そして結構な頻度でうちに泊まりにくる。

別に付き合ってるとかじゃない。

エロいこともない。

でもなんか、甘くて、居心地がいい


お菓子を入れてる棚にはいつも彼女が買ってくるチョコレート菓子が入っている。






















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