胸のざわつき

 公園を後にして、店長、妹尾さん、私で並んで歩く。

 与野よの本町ほんまち駅辺りに住んでいるという店長には逆方向だというのに、「僕にとっては中学生の娘も君たちも、ほとんど変わらない子どもなんだ」と与野駅まで付き添って送ってくれる。

 与野公園から与野駅までの道は、住宅街とはいえ、十時も近くなった今や人通りもそう多くない。

 三人の足音と、時折スマホが震える音が聞こえる。

 一度、それまでの短い音とは異なる長い振動音が響いたかと思えば、店長がポケットからスマホを取り出し、耳に当てた。

「ハイ僕です。――今から帰るよ、うん。――え、例の子の名前と家が分かったの?――うん――うん――そっか、ひとまず安心だ――わかった。君こそ仕事で大変なのに、本当にありがとう」

 いつも眠そうな店長の顔が、心なしかシャキッとしている。

「店長、まさか」

「あれからずっと、妻と一緒に調べていたんだ。妻の趣味仲間でよく家族ぐるみで旅行にも行くご近所さんが……そんなことはどうでもいいか。ある人から『近所に住む男の子が、まだ小さいのにいつも家に一人でいる』って話が、妻の耳に入ったんだ。さらに、娘の小学校時代のママ友で、うちの常連のお客様から気になるウワサを聞いてね。『あの与野国際に通う秀才が、夜遅くまで一人で公園にいる』って。それに加えて、竹田さんの話。これでほとんど確実に繋がったと言ってもいいだろう。あの子はマサキショウくん。僕の妻が今しがた、ネグレクトの可能性があるとして児童相談所に通報したよ」

 店長は、念のためね、と付け足した。

 安心したのもつかの間。

 児童相談所、ネグレクト……耳慣れない言葉に、心がざわついた。

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