フリータ、暁を覚えず
眠すぎる。まさに
ショショテイチョウを聞く、ヤライフーのなんとかかんとか、って。そりゃまあ私が知らないだけで、続きくらいあるよね。
そんなことはさておき、最近気になるお客さんがいる。
小学三、四年生くらいの男の子で、一人で来てカップ麺を買っていく。
時間は大体七時ごろ。お仕事終わりのサラリーマンが多い時間帯。だから、一人の小さな子どもは目立つ。カップ麺は毎晩のご飯だろうか。
その少年は今日も手にカップ麺を一つだけ持ってレジにやってきた。
「ぼく、毎日カップ麺食べてるの?」
まずい、やってしまった。ついうっかり。言葉が口をついて出てきた。
少年は一瞬目を大きく見開き、それから唇を尖らせた。大きく開かれた目はそのまま、私をじっと睨んでいる。
「食べてるよ。なんか文句ある?」
言ってしまった。そして、言い返されてしまった。
相手は子どもとはいえお客様。言い返す言葉を迷いながら、
少年は支払いの終わったカップ麺を素早く手に取り、ツンとした顔でレジを後にした。
しかし次の日も、少年は私のレジにやってきた。
他のレジも開いてるのに私のところに来るってことは――話しかけてもオッケー、ってことだね?
「いらっしゃいませ、こんばんは。お品物お預かりいたします。カップ麺が一点。……あらら? ぼく、もっと栄養あるもの食べないと、ちゃんと声変わりできずに声が高いままになっちゃいますよ?」
大人の余裕を見せつけるためににっこりと笑顔を向ける。
「おばさんはお酒で声変わりしたんだよね! 酒ヤケ声!」
この少年、超生意気。
「この声はハスキーって言うんです」
苦し紛れに言い返すと、少年は皮肉たっぷりに「なるほど勉強になりますー」とニコニコ。クソガキめが。
バーコードを通したのはカレー味のカップ麺。
これ、私もたまに食べる。味の種類は中辛と辛口があるけど、少年の今日の晩御飯は中辛の方らしい。ふーん?
「あらま、中辛食べるんですか? 辛口の方が美味しいのに。あ、でも辛口は大人の味だからまだ早いかな?」
「うるさいなあ。その程度でマウント取るなんて、おばさんなのに大人げないよ」
生意気な上に弁が立つ。
――私は、得意げに鼻を鳴らす少年が支払いを済ませて帰るのを見送った。
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