それが二人の、最後の会話。

 みやこは春子との久々の再会の際に驚いた。

 約二ヶ月ぶりに出会う春子の姿が、やけに薄く、細く、見えたからだ。

 かと言って春子は、いつも通りみやこのレジに並んで、普段と変わらぬ笑顔で会話を交わした。

 買い物かごの中身は、惣菜が三パックと、冷凍のブルーベリー一袋。

 ――いつもは、彩り豊かな旬の野菜と、ハーブソーセージと、パンと、たまにお酒が入った、賑やかな買い物かごをしているのにな、とみやこは思った。

 けれども毎日料理するのだって大変だろうし、実際自分自身は自炊じすいなんてほとんどしないし、こういうときもあるよなと思い直し、みやこは特に何も訊ねなかった。


 春子は一枚のフライヤーをみやこに手渡した。

 その手が骨張ほねばっていて、やはり流石に何かおかしいと思ったが、タイミング悪く春子の後ろにはレジ待ち客が並びはじめる。

「個展、開くの。もしよかったら来てほしくて」

 それだけ言い残した春子の顔色は普段通り良くて、みやこはますますよくわからなくなった。

 ひとまずフライヤーを受け取り、急いで返事する。

「絶対予定空けて行きます。春子さんの絵、絶対観に行きます」


 それが二人の、最後の会話。

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