第六話 冒険者さん、お侍と街へ行く(2)
当初の予定通り、夕方には森を抜けることができた。目の前にはアンギラへと続く広大な草原が広がっている。紅に金を混ぜた鮮烈な色彩、夕焼けに照らされて風に
「暗くなる前に野営の準備をしてしまおう。悪いけど、クロスも手伝ってくれるかな」
「
冒険者パーティーについて説明して以降、クロスは面白がっているのか、リーダーリーダーとからかってくるようになった。自分よりも
「私はテントを張りますね、リーダー」
「
「んじゃ俺は晩飯でも調達してくるぜ、リーダー」
────まぁ、仲間たちまで悪ノリしているのはムカつくが。
「じゃあ、クロスはマウリと一緒に食料の調達を頼めるかな?」
「承知した」
「よっしゃ! 俺の予備の弓貸すからよ、どっちが多く獲物を狩れるか勝負しようぜ!」
「いいだろう。だが、勝負ということなら手加減はできんぞ。負けても泣くなよ」
「言ってろ! 剣じゃ勝てねぇが、俺は弓士だ! 絶対負けねえ!!」
ワイワイと騒ぎながら走っていく二人を見送り、フランツは
ここまでの道程でクロスは随分とパーティーに
多種多様な冒険者が集まるアンギラでは、王国の他の地域に比べると種族間の差別は少ない方だ。それでも、
小人族には
そして残念なことに、その悪評は小人族全体に波及してしまっている。小人族というのは種族間で見た目に差異がなく、本人たち以外には見分けがつかないのだ。よって、善良な種族である
…………少なくとも、俺の目の届く範囲ではもう嫌な思いはさせたくないな────
「おおい、
「テントも張れましたよー」
もやもやと取り留めもないことを考えていると、後ろから聞こえた声に耳をくいと引っ張られる。
「ありがとう。薪も十分集まったし、パメラ、火を頼むよ」
「はいはーい」
彼女は竈の前にしゃがみ込み、
俺がパーティーの回復役になれれば、もっと依頼の幅も広がるんだけどな…………
「よし、じゃあ後は食料班の帰りを待とうか」
両腕に
「おかえり。大猟だね」
どうやら狩り勝負はクロスに軍配が上がったようだ。
「弓で負けた……。コイツ、やっぱバケモンだ」
「クロス、お前さん剣士じゃろう? 弓も使えたのか?」
「
「「………………………」」
「マウリ、クロスさんの腕前はそんなに凄かったんですか?」
「……一流だよ。俺と同じ弓なのに、飛距離も威力もケタ違いだった。
「ま、まぁ、とりあえず食事にしようか」
夕飯は
夕日が丘の向こう側へ完全に落ち切り、一行は交代で
ところで、ここで少し問題が起きた。冒険者は行軍中の負担を減らすため、依頼に出る時は決まって最低限の荷物しか持たない。当然テントも一つしか持ってきておらず、いつものように皆で寝る準備を進めていたのだが────これに、クロスが強い拒否感を示したのだ。
彼いわく、『婦女子と
それを聞いたパメラは久々に女性扱いされたのが嬉しかったのか、大喜びしていたが……。
結局、何を言ってもクロスは
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